名高き老蘇の森、安産の神、桃山期の貴重な銘文ある棟札、重文本殿
[住所]滋賀県近江八幡市安土町東老蘇1615
[電話]0748-46-2481

奥石神社(おいそじんじゃ)は、滋賀県近江八幡市安土町東老蘇にある神社。東海道本線の安土駅の南東約3.5キロ。国道8号線の南。参拝すれば、御朱印を頂ける。駐車場もある。

『延喜式神名帳』にある「奥石神社(近江国・蒲生郡)」に比定される式内社(小社)。近代社格では県社

第7代孝霊天皇の御宇、当地一帯は、地が裂け、水が湧いて、とても人の住む所ではなかったが、石辺大連という人が神の助けを得て当地に松・杉・桧を植えた。

すると、たちまち大森林になったと伝えられている。この森が老蘇の森であり、万葉の時代から世の移り変わりとともに数々の歌に詠まれている名高い森。

現在地の北には標高432.7メートルの観音寺山がある。繖山(きぬがさやま)とも呼ばれ、当社の御神体山ともされる。

第10代崇神天皇の御宇、四道将軍を派遣した際、吉備武彦が武運祈願のために勧請、社殿を創建したと伝わる。ただし、吉備武彦は日本武尊の従者で、時代が合わない。

四道将軍であれば、吉備津彦命のことか。『古事記』では孝霊天皇の御代に吉備国を平定したと記されている。『日本書紀』では、崇神天皇の御代に活躍。

第12代景行天皇の御宇、日本武尊の東征の際、『古事記』にも記載されている弟橘姫命の献身について、当社では異説が伝わっている。

それによれば、日本武尊の行軍のため、海神を鎮めるために、弟橘姫命が犠牲になる際、弟橘姫命は妊娠していたという。そこで、下記のように誓願した。
我胎内に子在すも尊に代わりてその難を救い奉らん霊魂は飛去り江州老蘇の森に留まり永く女人平産を守るべし
以来、当社は安産の神として崇敬されたという。また、第31代用明天皇(在位:585年-587年)の御宇、聖徳太子が諸国御巡歴の途中、老蘇の森に立ち寄った。

その際、その妃である高橋姫が難産だったので当社に祈願したところ、たちどころに安産になったとも伝わっている。

奈良時代の神護景雲元年(767年)、神封一戸の記載が残っている。平安時代前期の仁寿元年(851年)、正六位上に進んだ。

中世になると、近江の守護職佐々木氏の崇敬が篤かったという。安土桃山時代の天正9年(1581年)、柴田勝家の一族という柴田新左衛門尉家久が造営した。

その際の社殿が現存のものである。国の重要文化財に指定されている。この際の棟札が残り、下記の銘文がある。

江州佐々木御庄内老蘇村御社建、天正九年正月二十六日
施主者柴田新左衛門尉家久美州西方池尻住人也、天正九午辛巳書之畢


大工 西之庄左衛門三郎 筆者観音寺住僧円王院定長
八日市藤左衛門内口七是也
三間社流造の庇の問に建具を設けて前室とし、さらに向拝をつける形式は県内に中世の遺構が多く、古式の流造がひときわ優美に発達したもの。

庇の間は開放としているが、中世に発達した形式を踏襲しており、蟇股には唐草文様を透彫りしており、手挟には彫刻が施されている。

また、母屋の腰廻りの嵌板に配列した格挟間なども含め、各所に華麗な装飾をつけた当代第一級の本殿建築である。

本殿の再建は織田信長が城下町を形成する施策に関連したものと考えられ、棟札はその考証の好資料となるという。

江戸時代中期の亨保4年(1719年)5月、第108代後水尾天皇の皇女である林丘寺普明院宮は、その母妃が懐妊の際、当社に安産祈願したという。

幕末の慶応元年(1865年)には16代越前福井藩主の松平春嶽が子とともに参詣、祈願したと伝わる。

明治9年(1876年)10月、村社に列し、明治14年(1881年)2月に郷社に昇格した。明治41年(1908年)4月、神饌幣帛料供進社に指定された。

大正13年(1924年)2月、県社に昇格し、当時まで鎌宮神社と称していたものを、現社名に改称した。

御祭神は天児屋根命。ただし、南北朝時代の『神社本紀』では、奥津比古命奥津比売命・日本武命・弟橘比売命としている。

また、『神名帳考証』でも奥津比古命・奥津比売命としており、もともとは奥津比古命・奥津比売命が御祭神だったとも考えられている。例祭は4月7日で郷大祭。

本殿に向かって左には境内社として、摂社諏訪明神社が鎮座する。その社殿は、正面柱間1.32メートルの一間社流造、檜皮葺の建物。

建立年代は不詳だが、舟肘木、向拝の木鼻、連三斗組の組物の部分的な特徴や、全体の様子から、本社本殿と同じく、桃山時代の建立されたものと考えられている。

安政7年(1860年)、明治13年(1880年)にそれぞれ修理の記録がある。後世の修理を受けながらも、要所に当初材をよく残している。市の文化財に指定されている。

境内の一隅には「夜半ならば老蘇の森の郭公今もなかまし忍び音のころ」という本居宣長の歌碑が立っている。

【ご利益】
安産、女性守護、事業成功(公式HP
奥石神社 滋賀県近江八幡市安土町東老蘇
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奥石神社 滋賀県近江八幡市安土町東老蘇の御朱印