天都賀佐比古神社（あまつかさひこじんじゃ）は、徳島県美馬市美馬町轟にある神社。天津賀佐彦神社、天都賀佐彦神社とも。御朱印の有無は不明。

『延喜式』巻9・10神名帳 南海道神 阿波国 美馬郡「天都賀佐毘古神社」に比定される式内社（小社）の論社。近代社格では村社。

創祀年代は不詳。轟の地にあるため、轟大明神、轟宮とも呼ばれる。時に当地を「裏」と表記するものが見られるが誤り。

もとは、当地の西方200メートルほどの高畑にあったという。近くには「段の塚穴」と呼ばれる古墳や白鳳期の建立という立光廃寺の遺跡などがある。

そのため、創祀年代は6世紀以前ともされる。古代から美馬郡の中心。美馬郡境のあった大村郷（郡里）一帯の住民と郡領が奉仕していた神を祀ったという。

御祭神は、風神である級長津彦命と級長津姫命。『阿府志』に「祭神一座　級長津彦命」ともある。しかし『特選神名牒』では下記のようにこれを否定している。

今按阿府志祭神級長津彦命とあるは賀佐毘古の賀佐を風神の加世に思ひよせたる説なるべし故今とらず

『阿波國式社略考』『神名帳考証』では建貝兒王命を御祭神として挙げている。いずれにせよ、天都賀佐比古命・天津賀佐彦命・天都賀佐彦命、天都賀佐毘古命なのだろう。

古くから和傘の製造が行われていた地方なので、「かさ」との関連を指摘する向きもあるが、賀佐毘古→賀佐→加世よりも厳しいか。

基本的には風の神ということで、風神としての神威の伝承が残っている。一つは、この社の前を乗馬のまま横切ると吹き飛ばされる、というもの。

また、吉野川を西へ遡る船は、帆をかけたまま通ると転覆するともされる。

そのため、境内・社殿は南の吉野川を向いているが、御神体は北向きに安置されている、とも。古神札には「日本一社北向鎮座」と記されているという。

戦前まで、当社の秋祭りは、近在まれに見る盛大なものだったと伝わる。喜来・中山路・宗重・川原町から屋台・よいやしょが繰り出し、数十に及ぶ練り物で神輿渡御の行列は豪華を極めた、という。

また、昭和30年代まで秋祭りに鞍などの飾り付けをした馬が出ていた。上と下にそれぞれ馬当屋があって、馬を出した。馬がない家では、馬を借りてきて出した。現在、馬当屋は消滅している。

参道の狛犬は二対。手前側が平成の世に奉納されたもので、奥側が幕末の嘉永年間（1848年-1855年）奉納のもの。

二つの狛犬はほぼ隣接しており、新旧コントラストが興味深い。また、境内社に若宮神社がある。

なお、式内社「天都賀佐毘古神社」の論社は他に、西荒川の天津賀佐彦神社がある。

【ご利益】
五穀豊穣、家内安全、夫婦和合

【関連記事】
・徳島県の神社 - 本サイトに掲載されている神社で、徳島県に鎮座している神社の一覧