全国にある蚕影神社の総本社、金色姫の伝説、養蚕業とともに
蚕影神社 茨城県つくば市神郡1998
[住所]茨城県つくば市神郡1998
[電話]029-866-0502 - 筑波山神社

蚕影神社(こかげじんじゃ、蠶影神社)は、茨城県つくば市神郡にある神社。近代社格では村社。参拝すれば、御朱印を頂ける。

古名は蚕影山桑林寺、蚕影明神など。通称は蚕影山神社(こかげさんじんじゃ)。全国にある蚕影神社の総本社である。

筑波山地の不動峠から多気山(城山)にかけての山腹北側に鎮座する。山稜を挟んで南側には平沢官衙遺跡や中台遺跡といった遺構が分布している。

入口は筑波山神社の表参道であったつくば道から、神郡館地区に分岐する道の突き当たりにあり、社殿までは長い石段が続く。

神社がある山を俗に子飼山(大日本地名辞典)、蚕飼山(筑波山名跡誌)、神郡山などという。蚕影山は寺院時代の山号である。

古来、筑波山神社とも縁が深い。筑波山神社の御座替祭を構成する祭祀に神衣祭と神幸祭とがある。

これらはいずれも神衣を祭器としているが、蚕影神社は神衣を織るための養蚕、製糸、機織の技術伝来の地として、養蚕の神を祀っている。

名物は蚕影羊羹。入口に茶屋「春喜屋」があり、当社の護符を受けられる。

飛鳥時代、第29代欽明天皇の御代(539年-571年)、北天竺の旧仲国の霖夷大王と光契夫人の間に金色皇后(金色姫)という娘がいた。

夫人は病で亡くなり、王は後妻となる后を迎えたが、后は金色姫を疎み、王の目を盗んで、姫暗殺の奸計を巡らせた。

第一に、獅子王という獣が巣食う師子吼山に捨てさせたが、獅子王は金色姫を襲うことなく丁重に宮殿に送り届けた。

第二に、鷲、鷹、熊などが巣食う辺境の鷹群山に捨てさせたが、鷹狩のために派遣された宮殿関係者が発見した。

第三に、海眼山という不毛の孤島に流させたが、漂着した漁師に保護された。

第四に、清涼殿の小庭に埋めさせたが、約100日も経った頃、地中から光が差したので、王が掘らせたところ、金色姫がやつれた姿で救い出された。

事情を知り、姫の行く末を案じた王は桑で作った靭(うつぼ)船に姫を乗せ、海に流した。この船が常陸国の豊浦湊に漂着した。

豊浦湊に住む漁師、権太夫夫婦が金色姫を救い面倒を見たが、姫は空しく病に倒れた。

ある夜、夫婦の夢枕に姫が立ったので、唐櫃を開いたところ、亡骸はなく無数の虫が動いていた。

金色姫が靭船で流れてきたことから、桑の葉を与えたところ、虫は喜んで食べ、次第に成長した。

ある時、虫は桑を食べず、頭を上げてわなわなと震え出した。夫婦が心配していると姫が再び夢枕に立ち、この休みは継母から受けた受難の表れだと告げた。

「獅子の休、鷹の休、船の休、庭の休を経て、靭船の中で繭を作ることを覚えた」という。姫が告げた通り、虫はしばらくして繭を作った。

夫婦は筑波山の蚕影道仙人ともに繭から綿糸を紡ぐ技術を教わった。さらに筑波に飛来された欽明天皇の皇女各谷姫に神衣を織る技術を教わった。

これが日本における養蚕と機織の始まりという。

養蚕と機織を営んだ夫婦は、靭船が辿り着いた豊浦に御殿を建立、金色姫を中心に、左右に富士と筑波の神を祀った。

これが当社の創始だという。主祭神は、和久産巣日神(金色姫)・埴山姫命(筑波の神)・木花開耶媛命(富士の神)。

他の創祀に関する説に、第13代成務天皇の御代、平安時代の延長4年(926年)、第10代崇神天皇の御代などがある。

往時、茨城県一帯は養蚕業が盛んで、養蚕にまつわる地名や神社が多数残っている。河川には鬼怒川(絹川、衣川)、小貝川(蚕飼川)、糸繰川などがある。

日立市川尻町の蚕養神社、神栖市日川の蚕霊神社には、蚕影神社と同様、養蚕伝来に関する伝承が残る。

また、結城市小森(旧下総国。小森は蚕守の変化とも)の大桑神社は、東国に養蚕を伝来した忌部氏の阿波斎部氏による創祀と伝えられる。

蚕影山信仰は、中世末期から養蚕業が日本の基幹産業であった昭和中期まで、長く現役性を保った。

しかし、往古の信仰は、養蚕業の急速な衰退とともにした。境内には壮麗な社殿に対して、急速な衰退の痕跡といえる茶店・休憩所の廃墟が今も残る。

明治40年(1907年)8月には無格社大夫神社を、明治42年(1909年)6月には無格社六所神社をそれぞれ合祀した。

現在、当社は筑波男神筑波女神素盞鳴命月読命蛭子命天照大神・生馬命を配祀するが、これらは六所神社の御祭神である。

六所神社は逆川を挟んだ山麓の臼井字六所にあり、六所皇大神宮、六所神宮、御座替宮とも呼ばれた。

もともと筑波山神社の里宮として御座替祭を行なっていた古社とされ、江戸時代には朱印地20石を安堵された。

また、大正4年(1915年)10月にはいずれも無格社の、杉木の稲荷神社、天満神社、浅間社、山ノ神社、大貫國神神社、稲荷神社を合併した。

なお、平成21年(2009年)6月6日公開の映画『ガマの油』(役所広司監督)のつくば市におけるロケーション撮影は主に当社で行われた。

【ご利益】
産業振興、事業成功、安産、健康長寿
蚕影神社 茨城県つくば市神郡
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