飛鳥朝に酒造の神を奉斎、室町期の本殿が重文、10月例祭に神輿渡御
酒垂神社 兵庫県豊岡市法花寺字長楽寺725-1
[住所]兵庫県豊岡市法花寺字長楽寺725-1
[電話]0796-32-2494 - 四所神社

酒垂神社(さかたれじんじゃ)は、兵庫県豊岡市法花寺字長楽寺にある神社。御朱印の有無は不明。

『延喜式神名帳』にある「酒垂神社(但馬国・城崎郡)」に比定される式内社(小社)。近代社格では村社。

円山川の支流である鎌谷川が形成した谷の平坦部東端、京都府京丹後市久美浜町へ通じる峠の口に位置する。

境内は京都市右京区高雄から紅葉を移植し、社前を流れる鎌谷川を高雄の清滝川に見立てており、紅葉の名所として知られている。

社伝によれば、飛鳥時代の白鳳3年(675年)の夏、当地を治めていた物部韓国連久々比命という郡司が神供用の稲を穫る贄田に酒造所を造った。

その際、酒解子神、大解子神、子解子神の酒造三神を祀って神酒を醸造し、これを祖神に供えて五穀豊穣を祈願したのが創祀だという。

梅宮大社の御祭神と比べると、酒解神はおらず、木花之佐久夜毘売邇邇芸命火遠理命に対応するか。

現在の御祭神は、酒美津男命(さかみずおのみこと)と酒美津女命(さかみずめのみこと)。

『延喜式神名帳』宮中造酒司坐神六座の中の酒殿神社二座と同神、あるいは、山城国綴喜郡の佐牙神社、尾張国中島郡の酒見神社との関連も考えられる。

社名は「さかたれ」と読み、社伝によれば、鎮座地にちなむ「坂垂れ」の意味であるが、御祭神が酒の神であるために、「酒樽」にかけられたとも。

当地周辺には、飛鳥時代から奈良時代にかけての法花寺須恵器窯跡群があり、シイダニ窯跡群、タニオカ窯跡群、コヤマ窯跡群、カマド窯跡群の四つの窯場があった。

中近世には大倉大明神・大蔵大明神とも。明治6年(1873年)10月に村社に列し、大正7年(1918年)6月15日に神饌幣帛料供進社に指定された。

例祭は現在、10月15日に斎行され、神輿が獅子舞などを供奉して御旅所まで巡幸する。

かつては旧暦9月10日が祭日で、当日榊を立てて神霊を招請し、神社で醸造した神酒を供える特殊神事を行っていた。

本殿は一間社流造杮葺で覆屋によって保護されている。棟札から、室町時代の文安元年(1444年)に遷宮を斎行したものであることが判明している。

また、蟇股の裏から発見された願文の墨書から文安5年(1448年)、宝徳元年(1449年)と細部の造営が行われた。

本殿としては小規模であるが、一間社としては大きい方で意匠的にも大柄な木柄となっている。国の重要文化財に指定されている。

昭和44年(1969年)、本殿の解体修理が行われ、その際、室町時代の建立当初の容姿に復旧整備された。

境内社に、稲荷神社(保食命)、大正3年(1914年)に当社境内に遷座した山神社(大山祇神)、八幡神社がある。

かつては鳥居の西側に樹齢600年を数えた御神木の杉が2本そびえていたが、枯死の虞があるためとして、昭和59年(1984年)に伐採された。

跡地には氏子中による「大杉追憶ノ碑」が建てられている。その際に発見されたのが甕石(かめいし)。

現在、甕石は境内入り口である鳥居の足下左右に安置され、酒を汲み入れる瓶だとされる。

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酒垂神社 兵庫県豊岡市法花寺字長楽寺
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