一国一社の八幡宮に酒好きの神が遷座、天然記念物の社叢にスギの巨木
[住所]静岡県伊東市八幡野1
[電話]0557-53-2861

八幡宮来宮神社(はちまんぐうきのみやじんじゃ)は、静岡県伊東市にある神社。参拝すれば、御朱印を頂ける。

『延喜式神名帳』伊豆国賀茂郡にある「伊波久良和気命神社」「伊波例命神社」に比定される式内社(小社)の論社。近代社格では郷社。

八幡宮と来宮神社の二つからなり、八幡宮は誉田別命、来宮神社は伊波久良和気命(いわくらわけのみこと)を祀る。伊波久良和気命は、大変な酒好きであると伝えられる。

社伝によれば、八幡宮は奈良時代の神護景雲3年(769年)に勧請されたもので、一国一社の八幡宮として、伊豆国の八幡宮に定められたという。いわゆる国府八幡宮

来宮神社は、太古に、瓶に載って現在地の東方、八幡野港付近の金剛根津という所に漂着し、「堂ノ穴」という岩窟に祀られていた。キノミヤ信仰の一形態。

来宮の神は酒好きだったため、海岸に鎮座していた時に沖を通る船人に神酒の奉納を強要、困った人々が内陸部の「元屋敷」と呼ばれる現社地の一隅に遷した。

しかし、そこからも沖が見えて相変わらず神酒を乞うので、八幡宮の脇に再度遷祀したと伝わる。ちなみに、「堂ノ穴」には今も、「淡島さん」「稲荷さん」が祀られている。

酒に関わるエピソードは他にもある。神代の昔、神々が川を分ける相談をした時、酔って寝てしまった来宮の神には熱川温泉のある奈良本の濁った川しか残されなかった。

伊波久良和気命はこれを嫌がって取らなかった。そのため、八幡野一帯は水に恵まれず、温泉も湧かない、とされている。

当初二社は別殿であったが、平安時代にかけての延暦年間(782年-806年)に一つの本殿に祀るようになったという。

来宮神社は、御祭神名から式内社「伊波久良和気命神社」に、『伊豆国神階帳』に記載されている「従四位上 いはくらわけの明神」に比定されている。

式内社「伊波久良和気命神社」の論社は他に、南伊豆町子浦の八幡神社がある。

明治6年(1873年)に八幡宮が郷社に列し、明治9年(1876円)に来宮神社も郷社に昇格した。戦後は神社本庁に属している。

例祭は9月15日。海岸に設けた仮屋まで神輿の渡御があり、仮屋に1泊して翌16日に還御する。かつては竹筒に神酒を入れて伊古奈比咩命神社に送ったという。

伊古奈比咩命神社の御祭神は、三嶋大明神の后神とされる伊古奈比咩命。酒好きの伊波久良和気命から、人妻の姫に酒を送るのにはどのような背景があるのだろうか。

熱海市にも来宮神社がある。こちらは、「忌の宮」と解し、禁酒など断ち物の祈願をする人が多いことで知られる。

おそらくはキノミヤ信仰でつながる同じ名前の神社なのに、酒好きの当社とは真逆。

社叢は、ウラジロガシ、アラカシ、イチイガシ、スダジイ、タブノキなどの高木にカギカズラなどのツル植物が絡みつき、樹下にはシダ類が群生する典型的な照葉樹林。

中でもリュウビンタイの群落は日本列島での自生地の北限とされている。「八幡野八幡宮・来宮神社社叢」として、国の天然記念物に指定されている。

社殿手前に立っている一本杉の巨木も一見の価値がある。

本殿は寛政7年(1795年)の造替による正面2間側面1間の流造銅板葺で、向かって右に誉田別命、左に伊波久良和気命を祀る。拝殿、渡殿(幣殿)とともに県指定文化財。

安永7年(1778年)に修理が施された2基の神輿や、屋台は市の文化財に指定されている。

なお、伊豆市八幡には八幡来宮神社と呼ばれることもある来宮神社があり、当社とよく混同されるが、当社とは全く別の神社。

当社の特殊神事で歌われる神楽歌に「いはれ」と似ている歌詞があるため、式内社「伊波例命神社」とする説がある。他の論社に、石廊崎の石室神社がある。

【ご利益】
水難除け、海上・交通安全、厄災除け、五穀豊穣
八幡宮来宮神社 - 一国一社の八幡宮に酒好きの神が遷座、天然記念物の社叢にスギの巨木
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八幡宮来宮神社の御朱印