和歌山県和歌山市、三兄妹の木の神を祀る三つの式内名神大社、敵と父と
伊太祁曽三神 - 和歌山県和歌山市、三兄妹の木の神を祀る三つの式内名神大社、敵と父と
伊太祁曽三神(いたきそさんじん)とは、紀伊国名草郡、現在の和歌山県和歌山市に鎮座する、『延喜式神名帳』に記載のある名神大社の三つの神社で、うち一つは論社が三社あるため、現在は計五つの神社として総称される神、あるいは神社のこと。

延喜式内名神大社の三社は以下の通り。

・伊太祁曽神社 五十猛命
・大屋都比売神社 大屋都姫
・都麻都比売神社 都麻都姫

この三神は、素戔嗚尊を父とする兄妹で、紀伊国に木種をもたらした神々。『古事記』に見える、紀伊の語源ともいえる「木の国」の、いわば立役者ともいえる。『古事記』でオオクニヌシの受難を助けたのは、五十猛命のこととされる大屋毘古神『古事記』該当部分)。

『続日本紀』大宝2年(702年)には伊太祁曽・大屋都比売・都麻都比売3社の分遷の記事が掲載されている。また、その前後に、ほとんどの神社が日前神宮・國懸神宮に対して、神域を譲るか、争論を行ったりしている、歴史的な経緯としては仇敵(現在はその限りではない)。

神域を譲るなどは相当とんでもないことで、考えてみると出雲の国譲りと同じように、全くの平和裏に行われたと考える方がお目出度いのかもしれない。

この三社に代表される、原住国津神と、天照大神そのものともいえる鏡を奉じるコテコテの天津・天孫族たる日前神宮・國懸神宮という構図となり、興味深い。当然、両神宮も名神大社。

三社に遅れる、とは言っても、奈良時代初期、三神の父を祀る須佐神社が創建される。こちらも在田郡の式内名神大社。現在の有田市であり、三社や両神宮とは微妙に離れてはいる。

しかし逆にその点に、強大な両神宮に対して、三神を補佐するかのように奉斎された、と言えなくもないかもしれない。

関連する神社すべてが名神大社というのも、時の朝廷が、いかにこの地域の神社を丁重に扱ったかの証拠となっているともいえる。

長兄 五十猛命 伊太祁曽神社

伊太祁曽神社 - オオクニヌシを助けた木の神様、根の国訪問をアドバイスした神話の節目
[特徴]紀伊国一宮官幣中社別表神社
[住所]和歌山市伊太祈曽558
[電話]073-478-0006

長姉 大屋都比売 大屋都姫神社

大屋都姫神社 - 宇田森に鎮座する、紀伊国に木種をもたらした伊太祁曽三神の一柱の女神
[特徴]県社、明治期に総社大明神を合祀
[住所]和歌山市宇田森59
[電話]073-461-6494

末妹 都麻都比売 高積神社

高積神社 - 中世には日前國懸神宮にも対抗、和佐山の山頂と山麓に鎮座する高三所明神
[特徴]村社、日前神宮・國懸神宮と論争
[住所]和歌山市禰宜1390
[電話]073-477-0860

末妹 都麻都比売 都麻津姫神社(吉礼)

都麻津姫神社(吉礼) - 西礼の吉礼津姫命を合祀して紛争を解決した、伊太祁曽三神の一つ
[特徴]村社、西礼の吉礼津姫命を合祀
[住所]和歌山市吉礼911
[電話]073-478-3487

末妹 都麻都比売 都麻都姫神社(平尾)

都麻都姫神社(平尾) - 現在は小祠も、かつては広大な境内に荘厳な社殿、伊太祁曽三神
[特徴]今は小祠、かつて境内は2町半
[住所]和歌山市平尾字若林957
[電話]073-478-0006

※ちなみに、日前神宮・國懸神宮も紀伊国一宮を主張する。近代社格では日前神宮・國懸神宮がそれぞれ官幣大社に指定されて、伊太祁曽神社より上位となった。現在、伊太祁曽神社が神社本庁に属し、別表神社となっているのに対して、日前神宮・國懸神宮は神社本庁に属さない単立神社。


【関連記事】
神社いろいろ - 社格や形式などで神社を分類したまとめ - 神社めぐり全国編
和歌山県の神社 - 本サイトに掲載されている神社で、和歌山県に鎮座している神社の一覧