紀州スサノヲ祀る、本殿は藩主時代の吉宗の造営、重文などの刀剣
[住所]和歌山県有田市千田1641
[電話]0737-83-0195

須佐神社(すさじんじゃ)は、和歌山県有田市千田にある神社。鎮座地名にちなみ「千田神社」「お千田さん」とも。参拝すれば、御朱印を頂ける。

延喜式』巻9・10神名帳 南海道神 紀伊国 在田郡「須佐神社」に比定される式内社(名神大社・月次新嘗)。近代社格では県社

千田の南部の丘陵「中雄山」の中腹に、南面して鎮座する。中雄山の北端には6世紀-7世紀の岡崎古墳群がある。

御祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)。素戔嗚尊奉祀神社「全国清々会」にも加盟している。

社伝によれば、和銅6年(713年)10月初亥日に大和国吉野郡西川峰(不詳)から中雄山の山頂に勧請されたのが創祀という。

当初は海に面して西向きであったが、往来する船が恭意を表さないと転覆させるなどの神異を示した。

そこで、元明天皇(在位:707年-715年)の勅命により、海が見えないよう中腹の現在地に移し、南向きに改められたという。

当社が勧請されたという和銅6年10月初亥日は、当社の御子神に当たる紀伊国一宮伊太祁曽神社が現在地(和歌山市伊太祈曽)へ遷座したと伝える年月日と一致する。

『続風土記』では、このことから両社の縁故を指摘している。

文献上の初見は『新抄格勅符抄』大同元年(806年)牒で、紀伊国の「須佐命神」に対して10戸の神戸が給されている。

関連して、承平年間(931年-938年)頃の『和名類聚抄』では紀伊国名草郡に「須佐神戸」が見える。

神階としては、貞観元年(859年)に従五位上に昇った。『紀伊国神名帳』では天神として「従一位 須佐大神」と記載されている。

社伝では、当社の属す保田庄内の2町(約2ヘクタール)や日高郡富安庄内の30余町(約36ヘクタール)を伊太祁曽神社と共有したといい、中世からはこれに武家の信仰が加わった。

建武2年(1335年)5月に楠木正成が社領として安田(上記保田庄に同じ)の一帯を残らず寄進した。

同年8月には後醍醐天皇により元明・後醍醐両天皇の勅願所と定められ、宸筆の額と兵仗(刀や戟などの武具)4口が奉納されたという。

しかし、天正7年(1579年)3月の羽柴秀吉の湯浅攻めにおいて、秀吉に内応した湯浅の地頭・白樫左衛門尉実房によって当社は破却された。その際、社宝類や古記録をことごとく失ったという。

その後、慶長6年(1601年)に紀伊藩主浅野幸長が神田14丁3反(14ヘクタール)を寄進、それによって社殿再興がなされた。

元和年間(1615年-1624年)には浅野氏に代わって入封した紀州徳川家の初代藩主徳川頼宣によって改めて社領5石が寄進された。

さらに、社殿の造営・修復などは藩費をもって負担するように定められるなど、江戸時代を通じて紀州徳川歴代藩主から篤く崇敬された。

本殿は紀伊藩主時代の徳川吉宗の命により正徳元年(1711年)9月に造替されたもので、造営には紀州藩の大工頭である中村家が関わり、藩の直営であったという。現在は市指定文化財。

明治維新後、明治4年(1871年)に県社に列し、明治40年(1907年)に近在の22神社(いずれも無格社)を、翌年には星尾一ノ宮神社を合祀した(現 境内社の五ヶ庄神社)。

戦後は神社本庁に属している。

例祭は10月14日。「千田祭(ちだまつり)」と称される。古く9月初卯日に行われていた。正保4年(1647年)に頼宣によって9月14日に改められ、後に太陽暦に改められて現行日となった。

天正の頃(16世紀末)までは伊太祁曽神社から神馬12匹が奉納され、神官が神事に参加したという。

祭の前日(13日)は宵宮。翌14日の神事後に拝殿前で獅子と、鉾・采配を採物とする天狗と鬼からなる獅子舞が奉納され、次いで当社南西に位置する高田ノ浜のお旅所への神輿渡御が行われる。

この渡御は途中神輿を地面に投げ落とすなど荒々しいものである。

お旅所では獅子舞等が奉納され、夕刻には神前に供えられた6尾の鯛を投げて集まった漁師がこれを奪い合う「鯛投神事(たいなげしんじ)」が斎行される。

荒々しく奪い合うことから「千田のけんか祭り」とも称される。祭は「千田祭」として市の文化財に指定されている。

1月15日には粥占神事が行われる。境内の釜殿で小豆粥を炊き、その年の最適稲種を10種の中から選ぶ。その後小豆粥を食して1年の無病息災を祈る。

太刀 銘 因州住景長 1口(附 糸巻太刀拵)が国の重要文化財に指定されている。市指定文化財として、太刀 銘景真 1口(附 糸巻太刀拵)がある他、未指定ながら南紀重国奉納太刀などもある。

境内社に、東方殿(皇大神宮社。天照大神月読尊手力雄神)、西方殿(伊弉諾社。伊弉諾尊伊弉冉尊)、五ヶ庄社・稲荷社(二社相殿)など多数。

【ご利益】
厄祓い、無病息災、大漁満足・五穀豊穣
須佐神社(有田市) - 紀州スサノヲ祀る、本殿は藩主時代の吉宗の造営、重文などの刀剣
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須佐神社(有田市)の御朱印