1830年以前刊行の書による天満宮計22社、江戸二十五天神
『武陽菅原詣』収録の天神 - 1830年以前刊行の書による天満宮計22社、江戸二十五天神
『武陽菅原詣』収録の天神とは、文政13年(1830年)以前に刊行されたと考えられる尾崎道中『武陽菅原詣』に記載のある江戸の有力な天神・天満宮20社、二つに分けるのが妥当だと思われるものを換算して、計22社である。江戸二十五天神の形成に寄与した一覧の一つと考えられる。

よく言われる「江戸二十五天神」は、そのものズバリの文献はない。江戸中後期から、特に「菅公九百年忌」、つまり享和2年(1802年)前後から明治期にかけて盛んに言われ始めた、菅原道真を御祭神とする天神・天満宮の巡拝の一覧と考えられるだろう。『武陽菅原詣』を除けば、主に下記のものがある。

東都御府内天満宮諸社(『菅丞相往来』)
東都七天神『菅神御一代文章』
東都二十五天神(『卯花園漫録』)
府内天神(『江戸拾葉』)
菅祠二十五社(『霊神仏之記』)
御内府及び御内府近辺二十五天神(『天満宮御伝記略』)
東京天満宮二十五社(『菅原大神千年大祭図会』)

『武陽菅原詣』では、下記各社の巡拝を勧めつつ、天神を「寺子屋の守り神」としている。現在一般的に考えられている学問の神というのとそう遠くはないが、時代を感じさせる表現と言える。

NO.1 金杉村の牛天神 牛天神北野神社

北野神社(文京区) - 牛天神、頼朝も吉事に授かる、撫で牛を撫でると願い事が叶う!
[説明]撫で牛を撫でると願い事が叶う
[住所]文京区春日1丁目5-2
[電話]03-3812-1862

NO.2 早稲田の天神  北野神社

水稲荷神社 - 江戸中最古の冨士塚、眼病と水商売・消防に霊験ある霊水で有名、高田天神
[説明]水稲荷神社の境内社
[住所]新宿区西早稲田3丁目5-43
[電話]03-3200-4621

NO.3 鳴子の天神 成子天神社

成子天神社 - 成子・鳴子天神と呼ばれる江戸二十五天神の一社、新宿区内最大の富士塚
[説明]新宿区内最大の富士塚
[住所]新宿区西新宿8丁目14−10
[電話]03-3368-6933

NO.4 巣鴨天神山 子安天満宮

菅原神社(豊島区) - 子安天満宮で知られる巣鴨天神山、戦国期に保坂氏が当地に勧請
[説明]菅原神社(豊島区)
[住所]豊島区北大塚1-7-3
[電話]-

NO.5 小原町の天神 現存せず

『武陽菅原詣』収録の天神・小原町の天神
[説明]龍泉寺
[住所]文京区白山4-37-10
[電話]-

NO.6 本郷真光寺の天神 櫻木神社

櫻木神社(文京区) - 往古からの「本郷真光寺の天神」、サ・ク・ラ・サ・ク桜木天神
[説明]本郷真光寺の櫻木天神
[住所]文京区本郷4丁目3-1
[電話]03-3811-8535

NO.7 湯島天神 湯島天満宮

湯島天満宮 - 東京最強の学問の神様、元はアメノタヂカラオを祀り、後に合祀
[説明]江戸三大天神関東三大天神
[住所]文京区湯島3丁目30番1号
[電話]03-3836-0753

NO.8 下谷忍ヶ岡の天神 五條天神社

五條天神社 - ヤマトタケル創建の医薬祖神、3年に一度の大神輿渡御がある、下谷天神
[説明]ヤマトタケル創建の医薬祖神
[住所]台東区上野公園4-17
[電話]03-3823-2034

NO.9 箕輪の天神 梅林寺 綱敷天満宮

綱敷天満宮(台東区、梅林寺) - 道真の師の作によると伝わる天神尊像を祀る、箕輪天神
[説明]道真の師の作と伝わる天神尊像
[住所]台東区三ノ輪1丁目27-3
[電話]03-3872-2611

NO.10 神明皇の相社の天神 北野神社

石浜神社 - 源頼朝など関東武将の崇敬厚かった橋場・真崎の「神明さん」、石浜天神
[説明]石浜神社の境内社
[住所]荒川区南千住3丁目28-58
[電話]03-3801-6425

NO.11-1 浅倉寺中の両所の天満宮 現存せず

『武陽菅原詣』収録の天神・浅倉寺中の両所の天満宮
[説明]法善寺
[住所]台東区東上野6-17-3
[電話]-

NO.11-2 浅倉寺中の両所の天満宮 現存せず

『武陽菅原詣』収録の天神・浅倉寺中の両所の天満宮
[説明]善竜院
[住所]台東区浅草2-31-3
[電話]-

NO.12 新堀端の天神 浄念寺の化用天神

『武陽菅原詣』収録の天神・新堀端の天神
[説明]-
[住所]台東区蔵前4-18-11
[電話]03-3851-1921

NO.13 向ヶ岡柳島の天神 現存せず

『武陽菅原詣』収録の天神・向ヶ岡柳島の天神
[説明]龍眼寺
[住所]江東区亀戸3-34-2
[電話]-

NO.14 亀戸むらの天神 亀戸天神社

亀戸天神社 - 江戸期に創建された東の太宰府天満宮、東京の学問の神様最高峰の一社
[説明]江戸三大天神関東三大天神
[住所]江東区亀戸3丁目6番1号
[電話]03-3681-0010

NO.15 飯田町の世継の天神 築土神社

築土神社 - 将門ゆかりの勝守が有名な勝運と武勇長久の神、日本武道館の氏神、中坂天神
[説明]将門ゆかりの勝守が有名
[住所]千代田区九段北1丁目14-21
[電話]03-3261-3365

NO.16 麹町の天神 平河天満宮

平河天満宮 - “宮城に一番近い神社”湯島・亀戸と比肩する、江戸を代表する平河天神
[説明]江戸三大天神
[住所]千代田区平河町1丁目7-5
[電話]03-3264-3365

NO.17 愛宕下の長者の弁天相社の天神 天神社

愛宕神社(港区) - 東京23区最高峰26メートル愛宕山に鎮座する火防の神、出世の石段
[説明]愛宕神社に合祀
[住所]港区愛宕1丁目5番3号
[電話]03-3431-0327

NO.18 白金の長者古跡の天神 現存せず

『武陽菅原詣』収録の天神・白金の長者古跡の天神
[説明]松久寺。鎌倉市に移転
[住所]港区高輪1-23-34付近
[電話]-

NO.19-1 飯倉茅野の天神 天満神社

芝大神宮 - 頼朝、直義、秀吉、家康が崇敬した「関東のお伊勢様」、鎮座1000年
[説明]芝大神宮に合祀
[住所]港区芝大門一丁目12番7号
[電話]03-3431-4802

NO.19-2 飯倉茅野の天神 茅野天満宮

幸稲荷神社(港区) - 幸事が続出して社号が定着、病気平癒の神や社宝も、茅野天神
[説明]幸稲荷神社に合祀
[住所]港区芝公園3丁目5-27
[電話]03-3431-8281

NO.20 芝高輪の如来寺の相社の天神 現存せず

『武陽菅原詣』収録の天神・芝高輪の如来寺の相社の天神
[説明]如来寺。品川区西大井に移転
[住所]港区高輪2-12-58
[電話]-

【参考文献】
・中川和明「天神信仰の地域的展開-江戸・東京の天満宮巡拝を例に-」 - 『日本宗教文化史研究』(第18巻2号 通巻36号、2014年11月)

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