江戸後期の『卯花園漫録』の天満宮25社、江戸二十五天神の源流の一つ
東都二十五天神 - 江戸後期の『卯花園漫録』の天満宮25社、江戸二十五天神の源流の一つ
東都二十五天神とは、江戸後期の『卯花園漫録』に記載のある東京(江戸)の有力な天神・天満宮25社である。江戸二十五天神の形成に寄与した一覧の一つと考えられる。『卯花園漫録』は文化6年(1809年)の序があるので、それ以前の刊行と思われる。

よく言われる「江戸二十五天神」は、そのものズバリの文献はない。江戸中後期から、特に「菅公九百年忌」、つまり享和2年(1802年)前後から明治期にかけて盛んに言われ始めた、菅原道真を御祭神とする天神・天満宮の巡拝の一覧と考えられるだろう。『卯花園漫録』を除けば、主に下記のものがある。

東都御府内天満宮諸社(『菅丞相往来』)
『武陽菅原詣』収録の天神
東都七天神(『菅神御一代文章』)
府内天神(『江戸拾葉』)
菅祠二十五社(『霊神仏之記』)
御内府及び御内府近辺二十五天神(『天満宮御伝記略』)
東京天満宮二十五社(『菅原大神千年大祭図会』)

およそ時代順。『卯花園漫録』は、このうち『江戸拾葉』『霊神仏之記』と並ぶ江戸後期の文献として、江戸の有力な天神・天満宮を25社抽出しようとする試みであり、江戸二十五天神の形成に寄与したものと考えられている。

『江戸拾葉』の府内天神と、表記や順番に違いはあるものの、同じ25社を選択している。

NO.1 亀戸宰府 亀戸天神社

亀戸天神社 - 江戸期に創建された東の太宰府天満宮、東京の学問の神様最高峰の一社
[説明]江戸三大天神関東三大天神
[住所]江東区亀戸3丁目6番1号
[電話]03-3681-0010

NO.2 麹町平河 平河天満宮

平河天満宮 - “宮城に一番近い神社”湯島・亀戸と比肩する、江戸を代表する平河天神
[説明]江戸三大天神
[住所]千代田区平河町1丁目7-5
[電話]03-3264-3365

NO.3 小石川牛天神 牛天神北野神社

北野神社(文京区) - 牛天神、頼朝も吉事に授かる、撫で牛を撫でると願い事が叶う!
[説明]撫で牛を撫でると願い事が叶う
[住所]文京区春日1丁目5-2
[電話]03-3812-1862

NO.4 大久保西向 西向天神社

西向天神社 - 東大久保村の鎮守社、大久保の天満宮として知られる、江戸期の有力天神
[説明]東大久保村の鎮守社
[住所]新宿区新宿6-21-1
[電話]03-3351-5875

NO.5 高田馬場下  北野神社

水稲荷神社 - 江戸中最古の冨士塚、眼病と水商売・消防に霊験ある霊水で有名、高田天神
[説明]水稲荷神社の境内社
[住所]新宿区西早稲田3丁目5-43
[電話]03-3200-4621

NO.6 小石川白山 現存せず

府内天神(『江戸拾葉』)・小石川白山白原町
[説明]龍泉寺
[住所]文京区白山4-37-10
[電話]-

NO.7 巣鴨天神山 子安天満宮

菅原神社(豊島区) - 子安天満宮で知られる巣鴨天神山、戦国期に保坂氏が当地に勧請
[説明]菅原神社(豊島区)
[住所]豊島区北大塚1-7-3
[電話]-

NO.8 上野山下五條天神 五條天神社

五條天神社 - ヤマトタケル創建の医薬祖神、3年に一度の大神輿渡御がある、下谷天神
[説明]ヤマトタケル創建の医薬祖神
[住所]台東区上野公園4-17
[電話]03-3823-2034

NO.9 浅草観音裏門 現存せず

府内天神(『江戸拾葉』)・浅草観音裏門通
[説明]法善寺
[住所]台東区東上野6-17-3
[電話]-

NO.10 浅草中谷竹門通 現存せず

府内天神(『江戸拾葉』)・浅草中谷竹門通
[説明]善竜院
[住所]台東区浅草2-31-3
[電話]-

NO.11 浅草新堀端 浄念寺の化用天神

府内天神(『江戸拾葉』)・浅草新堀端
[説明]-
[住所]台東区蔵前4-18-11
[電話]03-3851-1921

NO.12 箕輪 梅林寺 綱敷天満宮

綱敷天満宮(台東区、梅林寺) - 道真の師の作によると伝わる天神尊像を祀る、箕輪天神
[説明]道真の師の作と伝わる天神尊像
[住所]台東区三ノ輪1丁目27-3
[電話]03-3872-2611

NO.13 橋場真崎神明社内 北野神社

石浜神社 - 源頼朝など関東武将の崇敬厚かった橋場・真崎の「神明さん」、石浜天神
[説明]石浜神社の境内社
[住所]荒川区南千住3丁目28-58
[電話]03-3801-6425

NO.14 深川州崎 天満天神社

富岡八幡宮 - 天皇皇后両陛下もご観覧された江戸三大祭・深川祭で有名な深川八幡
[説明]富岡八幡宮の境内社
[住所]江東区富岡1丁目20番3号
[電話]03-3642-1315

NO.15 牛込七軒寺町 現存せず

府内天神(『江戸拾葉』)・牛込七軒寺町
[説明]多聞院
[住所]新宿区弁天町100
[電話]-

NO.16 飯田町中坂世継稲荷境内 築土神社

築土神社 - 将門ゆかりの勝守が有名な勝運と武勇長久の神、日本武道館の氏神、中坂天神
[説明]将門ゆかりの勝守が有名
[住所]千代田区九段北1丁目14-21
[電話]03-3261-3365

NO.17 四谷内藤宿 成子天神社

成子天神社 - 成子・鳴子天神と呼ばれる江戸二十五天神の一社、新宿区内最大の富士塚
[説明]新宿区内最大の富士塚
[住所]新宿区西新宿8丁目14−10
[電話]03-3368-6933

NO.18 高輪如来寺境内 現存せず

府内天神(『江戸拾葉』)・高輪
[説明]如来寺。品川区西大井に移転
[住所]港区高輪2-12-58
[電話]-

NO.19 愛宕下長者弁天 同所 天神社

愛宕神社(港区) - 東京23区最高峰26メートル愛宕山に鎮座する火防の神、出世の石段
[説明]愛宕神社に合祀
[住所]港区愛宕1丁目5番3号
[電話]03-3431-0327

NO.20 増上寺山内茅野 茅野天満宮

幸稲荷神社(港区) - 幸事が続出して社号が定着、病気平癒の神や社宝も、茅野天神
[説明]幸稲荷神社に合祀
[住所]港区芝公園3丁目5-27
[電話]03-3431-8281

NO.21 増上寺山内飯倉 天満神社

芝大神宮 - 頼朝、直義、秀吉、家康が崇敬した「関東のお伊勢様」、鎮座1000年
[説明]芝大神宮に合祀
[住所]港区芝大門一丁目12番7号
[電話]03-3431-4802

NO.22 白金樹木谷 現存せず

府内天神(『江戸拾葉』)・白金樹木谷高野寺下
[説明]松久寺。鎌倉市に移転
[住所]港区高輪1-23-34付近
[電話]-

NO.23 茅場町薬師同地 日枝神社日本橋摂社

日枝神社日本橋摂社 - 寛永年間に創建された山王日枝神社の摂社、茅場町天神・楓川天神
[説明]山王日枝神社の摂社
[住所]中央区日本橋茅場町1丁目6-16
[電話]03-3666-3574

NO.24 本郷三丁目 櫻木神社

櫻木神社(文京区) - 往古からの「本郷真光寺の天神」、サ・ク・ラ・サ・ク桜木天神
[説明]本郷真光寺の櫻木天神
[住所]文京区本郷4丁目3-1
[電話]03-3811-8535

NO.25 湯嶋 湯島天満宮

湯島天満宮 - 東京最強の学問の神様、元はアメノタヂカラオを祀り、後に合祀
[説明]江戸三大天神関東三大天神
[住所]文京区湯島3丁目30番1号
[電話]03-3836-0753

【参考文献】
・中川和明「天神信仰の地域的展開-江戸・東京の天満宮巡拝を例に-」 - 『日本宗教文化史研究』(第18巻2号 通巻36号、2014年11月)

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