兎と八幡神の鳩がけんかする伝承が残る口丹波の開発神、紅葉の名所として有名
[住所]京都府亀岡市上矢田町上垣内22-2
[電話]0771-22-1023

鍬山神社(くわやまじんじゃ)は、京都府亀岡市上矢田町にある神社。通称として「矢田社」や「矢田宮」とも。参拝すれば、御朱印を頂ける。

『延喜式神名帳』にある「鍬山神社(丹波国・桑田郡)」に比定される式内社(小社)。近代社格では府社

『矢田之祠記』(延宝元年(1673年))によれば、往古、泥湖であった亀岡盆地の開発のため、出雲大神が八神と黒柄岳で談合した。

そして一艘の樫の舟に乗り浮田(うけた)の峡(現在の保津峡の口)を切り開き、水を山城国方向に流して抜くことに成功し、広大な平野が開拓された。

出雲大神は天岡山の麓に祀られ、鍬山大明神として崇められた。また、この神は出雲国における10月(神無月)の会合には出席せず、郡内の八神は当社に会した。

また、開削に用いた鍬が山積みされたことから「鍬山」の社名となったと伝えられる。

亀岡盆地の開拓に関しては、市内千歳町千歳の出雲大神宮、東別院町神原の徳神社、篠町山本の桑田神社、保津町立岩の請田神社、大井町の大井神社、大阪府高槻市田能の樫船神社、所在不明の餅籠神社などにもある。

並列する八幡宮は、永万元年(1165年)に面降山(天岡山)に降臨したという。以来新八幡宮として鍬山宮の隣に祀っていたところ、雷雨の発生や鳩と兎の争いがあった。

村人はこれを両神の不和と捉え、八幡宮を杉谷に遷したところ収まったといわれる。

現在も鍬山宮は兎(御祭神である大己貴命の象徴)、八幡宮は鳩(御祭神は誉田別尊で、八幡神の象徴)の神紋を用いている。

慶長14年(1609年)に両宮が現在地に遷されたのちも、争いを防ぐために両宮の間に小池が設けられ、現在に至っている。

社伝では鍬山宮の創建は和銅2年(709年)といい、当初は面降山裏手、現社地から北西800メートルほどの医王谷にあった。

面降山には山頂にかけて小祠が点在しており、山頂には八幡宮が降臨したという影向石が残る。

医王谷出身という医家の丹波康頼(912年-995年)も当社を信仰したといわれ、「医王谷」の名も医学に精通した康頼に由来するという。

地名「矢田」は当社に関わるもので、八つの神田を持っていたことから「八田」と言われ、のちに源頼政が当地を拝領するにあたって「矢田」に改めたという。

また、古くから神輿祭・八日祭・庭燎神楽・競馬・相撲・猿楽などといった祭礼が行われていたと伝えられるが、天正4年(1576年)に丹波へ侵攻した明智光秀によりそれらの祭礼は廃され、別当寺として大智院(現在は廃寺)が建立された。また、八つの神田も接収された。

慶長14年(1609年)、亀山城主の岡部長盛が現在地に新たに社殿を造営して遷し、社地も寄進した。寛永16年(1639年)には藩主の菅沼定房から社領が寄進された。

延宝9年(1681年)には杉原守親が『祭礼中興記』を記し祭礼を再興。同年に城主の松平忠晴から神輿が寄進され、以来、例大祭は口丹波一の大祭「亀山祭」として賑わった。これが現在に伝わる「亀岡祭」となる。

鍬山宮と八幡宮の本殿の二棟は同じ垣内に鎮座し、鍬山宮は向かって左、八幡宮は右に位置する。両宮は同一の形式・規模で、造営時期も江戸時代の文化11年(1814年)。鍬山宮は寛正3年(1462年)以来の棟札を現存している。

明治6年(1873年)、郷社に列した。亀岡町制において、西の走田神社に対し、東の氏神とされた。昭和3年(1928年)に府社に昇格した。

例祭は10月。「亀岡祭」で、ほぼ1ヶ月間かけて行われる。古くは旧暦9月25日が神幸祭、30日が還幸祭であった。

八坂神社祇園祭のように11基の山鉾が巡行するほか、鍬山・八幡両宮の神輿が御旅所の形原神社まで渡御する。

境内社には、金山神社、樫船神社、高樹神社、日吉神社、熊野神社、稲荷疱瘡神社、愛宕神社、天満宮、厳島社、百太夫社がある。百太夫社は、境内入り口に鎮座し、本社に先立ってまず詣でるべき社といわれる。

現在では紅葉の名所として知られており、鮮やかな美しさは「矢田の紅葉」と賛えられる。二棟の本殿や道路に沿った参道が燃えるような赤色に包まれ、見頃には鮮やかなグラデーションが楽しめる。

境内にある心字池周辺の紅葉も大変美しいとされる。

【ご利益】
口丹波開発神・産土の神・医療の神(公式HP
鍬山神社 - 兎と八幡神の鳩がけんかする伝承が残る口丹波の開発神、紅葉の名所として有名
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鍬山神社の御朱印