読み:えんがくじしゃりでん
員数:1棟
種別:建造物の部 近世以前/寺院
時代:室町中期 室町中期年(1393-1466年)
重文:1899.04.05(明治32.04.05)
国宝:1951.06.09(昭和26.06.09)
都道府県:神奈川県
所在地:鎌倉市山ノ内
所有者:円覚寺
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円覚寺の舎利殿は開山塔頭の正続院にある。弘安8年(1285年)ころ創建されたが、1309年創建説もある。現在の舎利殿は、室町末期の永禄6年(1563年)の円覚寺大火の後、鎌倉尼五山の太平寺仏殿を正続院の昭堂として移建したものである。

ちなみに太平寺は鎌倉後期に鶴岡八幡宮東北方の谷戸に創建された禅宗尼寺で、南北朝に足利基氏の未亡人清渓尼が中興したが、戦国時代に廃された。

舎利殿の年代は様式より室町前期と推定され、南宋の中央様式に基づく禅宗様の最も純粋な遺構である。外観、内部の構成、装飾細部の性質まで正福寺地蔵堂(東京都東村山市)と似ており、室町前期の鎌倉地方禅宗仏殿は高度に標準化され、洗練されていたと考えてよい。

外観は方三間の高い主屋に低い裳階をつけ、葺入母屋造の屋根をあげた形式で、五山仏殿よりひとまわり小さく、各柱間も縮小され、雄偉な五山仏殿と対照的に華奢で繊細な意匠となっている。

組物は中備を中央間二組その他一組とした詰組で、裳階を三斗、主屋を三手先とし、主屋の軒を扇垂木とする。また、窓と入口の花頭形や、波形連子の弓欄間、頭貫や台輪の木鼻、竪張りの板壁なども禅宗様の特色である。

内部は全部土間で、主屋中央後方寄りに高い来迎柱を立て、虹梁大瓶束架構で仏壇前に広い空間をとる。

裳階は低く、海老虹梁で主屋と結ばれるが、主屋は高く、中央方一間の鏡天井に迫り上るような構成になり、側回り組物から斜めに持送られた尾垂木尻や、中央の鏡天井をうける詰組の二手先組物もよく禅宗様の特色を示す。

円覚寺舎利殿は旧太平寺仏殿としての高い由緒が明確であり、室町前期の正統的な中規模禅宗様仏殿の典型である。
国宝「円覚寺舎利殿」(神奈川県鎌倉市)