読み:うだみくまりじんじゃほんでん
員数:3棟
種別:建造物の部 近世以前/神社
時代:鎌倉後期 元応2年(1320年)
重文:1911.04.17(明治44.04.17)
国宝:1954.03.20(昭和29.03.20)
都道府県:奈良県
所在地:宇陀市菟田野区古市場
所有者:宇太水分神社
管理者:-

宇太水分神社の本殿は三殿であって、向かって右から天水分神(第一殿)、速秋津彦命)(第二殿)、国水分神(第三殿)を祀る。

いずれも一間社春日造であるが、春日大社の形式とちがい、母屋の前面に隅木を入れたいわゆる隅木入春日造の形式である。

春日大社本社本殿のように破風板に向拝の垂木をおさめる手法は、古式ではあるが技術的にはかなり無理があるので、それを隅木を入れることによって解決したのがこの形式。

この方法によれば、向拝の垂木も母屋と同様に繁垂木にすることができる。

母屋は低い亀腹の上にあり、組物を軒支輪付の出組とし、正面、側面に中備として蟇股を入れている。頭貫には木鼻をつけ、全体に塗装、彩色を施すなど、装飾的な配慮が目立つ。

身舎と向拝柱の間には繋虹梁を渡さず、手挟を入れるのみである。繋虹梁を用いないのは、3棟の社殿を側面から見た場合の見通しを考慮したためとみられる。

また背面では切妻造の軒をうけるため、木鼻を利用して三手先の組物をつくり出桁を支えるというめずらしい手法をとる。

第一殿は棟木銘によって元応2年(1320年)の建築であることがわかり、第三殿も同年の作であるが、第二殿は永禄元年(1558年)に新造に近い修理工事が行われた。

第一・第三殿は、隅木入春日造で建立年代の明らかなものとしては最古のものである。
国宝「宇太水分神社本殿」(奈良県宇陀市)
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