読み:くのうざんとうしょうぐうほんでん、いしのま、はいでん
員数:1棟
種別:建造物の部 近世以前/神社
時代:江戸前期 元和3年(1617年)
重文:1908.08.01(明治41.08.01)
国宝:2010.12.24(平成22.12.24)
都道府県:静岡県
所在地:静岡市駿河区根古屋
所有者:久能山東照宮
管理者:-

久能山東照宮の本殿、石の間、拝殿は、三棟を直線的に接続して一体化した、いわゆる権現造の形式をもつ複合社殿で、中井大和守正清によって計画され、元和3年末に正遷宮が行われた。

本殿は、桁行三間、梁間三間、入母屋造、銅瓦葺で、棟に千木、勝男木をあげる。前寄り一間通りを外陣として奥を一段高い内陣とする。

軸部は、円柱を長押と頭貫で固め、組物は内部を出組、外部を二手先とし、中備蟇股とする。内外陣の床は畳を敷き、天井は、外陣では小組格天井、内陣は二重折上小組格天井を張る。軒は二軒繁垂木で、妻飾は虹梁大瓶束である。

柱間装置は、外陣周囲に板唐戸を開き、内陣と外陣の正面中央間を両折板唐戸とする。

石の間は、桁行三間、梁間一間、両下造、銅瓦葺である。床板を低く張って畳敷とし、両側面中央間に桟唐戸を開き、天井は折上小組格天井を張る。組物は出組で、軒は一軒繁垂木とし、本殿の飛檐垂木及び拝殿の地垂木と、垂木木口を揃える。

拝殿は、桁行五間、梁間二間、入母屋造、正面千鳥破風付、向拝三間、銅瓦葺である。内部は畳敷の一室で、天井は小組格天井を張り、周囲に擬宝珠高欄付の縁を廻らし、向拝に浜床を張る。

軸部は、円柱を長押と頭貫で固め、組物は出組で、中備蟇股とする。向拝は、几帳面取の角柱間に虹梁を架けて、虹梁上に蟇股をおく。軒は二軒繁垂木で、向拝組物上に牡丹彫刻の手挟をおき、妻飾は、大屋根と千鳥破風ともに虹梁大瓶束とする。

柱間装置は、正面中央の三間は板唐戸両開きとし、両端間と側面前間に蔀を吊り、後方は格子嵌殺しとする。

各棟とも、伝統様式である和様を基調とし、複雑な構成になる立面や軒廻りなどを巧みにまとめ、蟇股内部を花鳥の透彫とするなど、細部も整った意匠をもち、軸部や軒廻りは黒漆塗、縁廻りは赤漆塗で仕上げ、要所に彫刻、錺金具、などを用いて荘厳化をはかっている。

久能山東照宮本殿、石の間、拝殿は、極めて洗練された意匠をもつ権現造社殿であり、江戸幕府における造営組織の草創期において、その礎を築いた中井大和守正清の代表的な遺構のひとつとして貴重であるとともに、江戸時代を通じて権現造社殿が全国的に普及する契機となった東照宮建築のうち最初期の社殿として、わが国の建築史上、深い意義を有している。
国宝「久能山東照宮本殿・石の間・拝殿(1棟)」(静岡県静岡市駿河区)
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