“猫の駅長”として国内外から人気を集め、2015年6月22日に急性心不全のため死んだ和歌山電鐵株式会社(本社=和歌山市伊太祈曽)貴志川線の三毛猫「たま」(メス、16歳)の社葬が6月28日、貴志駅(紀の川市貴志川町神戸)構内で営まれました。全国各地から、「たま」を愛した3000人以上のファンらが駆け付け、花をささげるなどして別れを惜しんだと言います。わかやま新報が報じています。動画は、2014年1月5日、「たま」ウルトラ駅長就任式終了後の撮影会の様子。

大国主神社(大國主神社)の山本幸泰宮司が斎主を務めた、と言います。神式による葬式というのももちろんありますが、当社は『古事記』にも描かれた、オオクニヌシが兄ヤソガミの迫害を避けて、木の国に逃げ込んできた神話を由緒として創建された神社です。

平安時代初期、今から1200年前にもなりますが、第52代嵯峨天皇が行幸したとする伝承があるほどの由緒ある神社。

その宮司による丁寧な葬送に「たま」の御魂も安んじられたことでしょう。

そして、8月10日の五十日祭(仏教のいわゆる四十九日)の翌11日に、貴志駅ホームにある「ねこ神社」横にたまの墓を建て、「たま神社」を創建、「たま大明神」として祀ると言います。

つまり神になる、ということ。だから神式の葬儀だったのかもしれません。

死んだ者が、それが人であれ、動物であれ、神になる。

日本人にとっては特に違和感のない話だとは思いますが、「猫が神になる」というのは、世界の大半では仰天ものでしょう。キリスト教、イスラム教はもちろん、発想としては仏教国にもないはずです。

今回の社葬は、中東カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」も取材に来たようですが、どう感じ、どう報じられることやら。。

世界は理解に苦しむ、日本独自の死生観。それが日本のオリジナリティ。

そして、今回のすべての要素は日本における、死、神、神社の成立、すべての流れをきれいに再現もしています。

地方鉄道の救世主のみならず、死して日本の文化をも体現する「たま」の偉大さに敬意を表します。

「たま大明神」の御朱印などができればまた話題となり、当地を訪れる人もさらに増え、当地の更なる活性化にもつながると思います。

まさにそれこそが、「たま」への慰霊であり、鎮魂となり、「たま大明神」のご神徳ともなるわけです。

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