那智の扇祭り(なちのおうぎまつり)
種別1:風俗慣習
種別2:祭礼(信仰)
公開日:毎年7月13、14日
指定日:2015.03.02(平成27.03.02)
都道府県:和歌山県
所在地:熊野那智大社(東牟婁郡那智勝浦町)
那智の扇祭りは、熊野三山の一つ、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の熊野那智大社の例大祭である。扇祭(おうぎまつり)または扇会式法会(おうぎえしきほうえ)とも。那智の火祭りの通称で知られる。古くは6月14日・18日に執行された。
「那智の火祭り」として和歌山県の無形民俗文化財(1960年〈昭和35年〉8月16日指定)に指定されている。奉納される田楽舞(那智の田楽)も国の重要無形民俗文化財である。
例大祭の準備は、6月30日に関係者が参集して例大祭の運営について協議する神役定から始まり、翌7月1日より大和舞・田楽舞の練習が始まる。
7月9日には社殿を清め、那智大滝の注連縄を張替え、11日には那智山住人が早朝から潔斎して白衣に着替え扇神輿(おうぎみこし)を組み立てる。
祭礼に用いられる扇神輿は、細長い框(幅1メートル、高さ10メートル)に絹緞子を取り付け、その上に装飾品を飾りつけて組み立てるもので、一般的な神輿とは構造が異なる。扇神輿全体の造形は、那智大滝の姿を模したもの。
扇神輿の頂上には「光」を表す造形物が頂かれて造化の三神の神徳をあらわし、前面には神威八紘を照鑑する8面の神鏡が取り付けられている。
神輿は12体造られ、一体が一月を表し、12体全体で一年を表している。扇神輿の特徴である扇は金地に朱で日の丸が描かれたもので、一体につき30面が取り付けられ、それら30面の他に半開きの2面を取り付ける。
扇の数の30とは旧暦における一月の日数に等しく、半開きの2面は月の上弦・下弦を表している。これらを組み立てる際に用いる竹の釘は、古くからの慣例に従い360本、すなわち旧暦の一年の日数と同じ本数を用いる。
次いで7月13日には宵宮祭が執行され、礼殿にて大和舞・田楽舞・田植舞が奉納される。
翌14日、例大祭の祭礼は、礼殿で開始される。早朝に扇神輿を礼殿前に飾り立て、本社大前の儀に続いて、大和舞・田楽舞(那智の田楽)・田植舞が奉納される。
大和舞は稚児の舞で、田植舞は田遊びの伝統を伝える。
午後からが扇神輿渡御式(おうぎみこしとぎょしき)。礼殿にて発輿式を行った後、宮司以下、祭りの執行に当たる祭員全員が扇神輿を拝し、神霊を扇神輿に迎える。次いで、大滝に向かって3度「ザアザアホウ」と閧声をあげ、礼殿内では大太鼓を連打する。
五十続松(いそつぎまつ)と呼ばれる小型の松明を携えた子ノ使(ねのつかい)を先頭に、前駆神職、伶人、馬扇、12本の大松明、神役、扇神輿、随員が礼殿前を出発する。
扇神輿の担い手は扇指し(おうぎさし)と呼ばれ、かつて社領であった山麓の市野々集落の人々が務める。扇神輿は幾度か伏せられたり立てられたりしながら前進し、大社と大滝との中間にあり、かつての拝所跡地とされている「伏拝」と呼ばれる場所ですべての扇神輿を直立させる。扇神輿が立てられる都度、行列の祭員らは拍手をして褒める(「扇立て」)。
その後、伏拝に扇神輿と扇神輿の神役を残し、宮司以下の祭員は大松明とともに、御滝本(飛瀧神社)へ下る。御滝本では時刻を見計らって伏拝に向かって「ザアザアホウ」と閧声をあげ、大太鼓が連打される。
御滝本から伏拝へ使者が送られ、使者の到着に応じて、伏せられた扇神輿が大滝参道鳥居の内に進む。鳥居をくぐると、扇が再び立てられる。御滝本の火所(いろり)ではこの間に松明に火が点けられ、順次出発して石段を上ってゆく。
この頃、八咫烏帽をかぶった権宮司が光ヶ峯遥拝所にて神饌を供える。
大松明と扇神輿が出会うと、大松明12体が円陣を組んで石段をまわって扇神輿に火の粉を浴びせ、扇神輿の前の神役も扇子を開いて松明の炎を扇ぎ、扇神輿を清める(「松明火焔の清め」、「大松明による扇神輿の清め」)。
一方では火払所役が手桶の水を汲んでは松明に浴びせかけ、火の粉を消して回る。炎と、松明所役と扇指しが交し合う掛け声が一丸となって祭りは頂点に達する。祭礼のこの部分に見られる炎の乱舞は、「火祭り」「御火の神事」と呼ばれるもの。
炎の乱舞が繰り返されるうちに松明の炎も消えかかり、松明は火所へ帰って炎を消して納める。御滝本へ進んだ扇神輿は、権宮司から扇褒めの神事を受けて、滝本祭壇左右に立てられる。
滝本祭の神事が執り行われた後、松明所役も交えた田刈舞・那瀑舞が奉納され、一同は大社へ還御する。再び礼殿前に扇神輿が飾られて還御祭の神事が行われた後、神役の手で扇神輿が解体され、扇祭りは幕を閉じる。
保護団体名:那智の扇祭り保存会
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種別1:風俗慣習
種別2:祭礼(信仰)
公開日:毎年7月13、14日
指定日:2015.03.02(平成27.03.02)
都道府県:和歌山県
所在地:熊野那智大社(東牟婁郡那智勝浦町)
那智の扇祭りは、熊野三山の一つ、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町の熊野那智大社の例大祭である。扇祭(おうぎまつり)または扇会式法会(おうぎえしきほうえ)とも。那智の火祭りの通称で知られる。古くは6月14日・18日に執行された。
「那智の火祭り」として和歌山県の無形民俗文化財(1960年〈昭和35年〉8月16日指定)に指定されている。奉納される田楽舞(那智の田楽)も国の重要無形民俗文化財である。
例大祭の準備は、6月30日に関係者が参集して例大祭の運営について協議する神役定から始まり、翌7月1日より大和舞・田楽舞の練習が始まる。
7月9日には社殿を清め、那智大滝の注連縄を張替え、11日には那智山住人が早朝から潔斎して白衣に着替え扇神輿(おうぎみこし)を組み立てる。
祭礼に用いられる扇神輿は、細長い框(幅1メートル、高さ10メートル)に絹緞子を取り付け、その上に装飾品を飾りつけて組み立てるもので、一般的な神輿とは構造が異なる。扇神輿全体の造形は、那智大滝の姿を模したもの。
扇神輿の頂上には「光」を表す造形物が頂かれて造化の三神の神徳をあらわし、前面には神威八紘を照鑑する8面の神鏡が取り付けられている。
神輿は12体造られ、一体が一月を表し、12体全体で一年を表している。扇神輿の特徴である扇は金地に朱で日の丸が描かれたもので、一体につき30面が取り付けられ、それら30面の他に半開きの2面を取り付ける。
扇の数の30とは旧暦における一月の日数に等しく、半開きの2面は月の上弦・下弦を表している。これらを組み立てる際に用いる竹の釘は、古くからの慣例に従い360本、すなわち旧暦の一年の日数と同じ本数を用いる。
次いで7月13日には宵宮祭が執行され、礼殿にて大和舞・田楽舞・田植舞が奉納される。
翌14日、例大祭の祭礼は、礼殿で開始される。早朝に扇神輿を礼殿前に飾り立て、本社大前の儀に続いて、大和舞・田楽舞(那智の田楽)・田植舞が奉納される。
大和舞は稚児の舞で、田植舞は田遊びの伝統を伝える。
午後からが扇神輿渡御式(おうぎみこしとぎょしき)。礼殿にて発輿式を行った後、宮司以下、祭りの執行に当たる祭員全員が扇神輿を拝し、神霊を扇神輿に迎える。次いで、大滝に向かって3度「ザアザアホウ」と閧声をあげ、礼殿内では大太鼓を連打する。
五十続松(いそつぎまつ)と呼ばれる小型の松明を携えた子ノ使(ねのつかい)を先頭に、前駆神職、伶人、馬扇、12本の大松明、神役、扇神輿、随員が礼殿前を出発する。
扇神輿の担い手は扇指し(おうぎさし)と呼ばれ、かつて社領であった山麓の市野々集落の人々が務める。扇神輿は幾度か伏せられたり立てられたりしながら前進し、大社と大滝との中間にあり、かつての拝所跡地とされている「伏拝」と呼ばれる場所ですべての扇神輿を直立させる。扇神輿が立てられる都度、行列の祭員らは拍手をして褒める(「扇立て」)。
その後、伏拝に扇神輿と扇神輿の神役を残し、宮司以下の祭員は大松明とともに、御滝本(飛瀧神社)へ下る。御滝本では時刻を見計らって伏拝に向かって「ザアザアホウ」と閧声をあげ、大太鼓が連打される。
御滝本から伏拝へ使者が送られ、使者の到着に応じて、伏せられた扇神輿が大滝参道鳥居の内に進む。鳥居をくぐると、扇が再び立てられる。御滝本の火所(いろり)ではこの間に松明に火が点けられ、順次出発して石段を上ってゆく。
この頃、八咫烏帽をかぶった権宮司が光ヶ峯遥拝所にて神饌を供える。
大松明と扇神輿が出会うと、大松明12体が円陣を組んで石段をまわって扇神輿に火の粉を浴びせ、扇神輿の前の神役も扇子を開いて松明の炎を扇ぎ、扇神輿を清める(「松明火焔の清め」、「大松明による扇神輿の清め」)。
一方では火払所役が手桶の水を汲んでは松明に浴びせかけ、火の粉を消して回る。炎と、松明所役と扇指しが交し合う掛け声が一丸となって祭りは頂点に達する。祭礼のこの部分に見られる炎の乱舞は、「火祭り」「御火の神事」と呼ばれるもの。
炎の乱舞が繰り返されるうちに松明の炎も消えかかり、松明は火所へ帰って炎を消して納める。御滝本へ進んだ扇神輿は、権宮司から扇褒めの神事を受けて、滝本祭壇左右に立てられる。
滝本祭の神事が執り行われた後、松明所役も交えた田刈舞・那瀑舞が奉納され、一同は大社へ還御する。再び礼殿前に扇神輿が飾られて還御祭の神事が行われた後、神役の手で扇神輿が解体され、扇祭りは幕を閉じる。
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