
「私が高天原に坐して、昔見て求めた国の宮の場所はここです。鎮め、定め、祀ってください」
ヤマトヒメは、御送駅使安部武渟河別命、和珥彦国茸命、中臣国摩大鹿嶋命、物部十千根命、大伴武日命、度会大若子命などに、この夢の内容を知らせた。
大若子命(おおわぐごのみこと、大幡主命)は喜び、
「神風の伊勢国、百船 度会県、さこくしろ宇治の五十鈴の河上に鎮り定まり坐すアマテラス」
と寿ぎ、終夜ら宴楽舞歌し、日小宮の儀の如く祭った。
ヤマトヒメは、
「朝日来向う国、夕日来向う国、浪音聞えざる国、風音聞えざる国、弓矢柄音聞えざる国、打まきしめる国、敷浪七保国の吉き国、神風の伊勢国の百伝ふ度会県の さくくしろ五十鈴宮に鎮り定り給ふ」
と、寿いだ。
送駅使が朝廷に還り、ヤマトヒメの夢の内容を奏上すると、ヤマトヒメの父・垂仁天皇はこれを喜び、大鹿嶋命を祭官に定め、大若子命を神の国造兼大神主に定めた。
神館を造営し、物部八十友諸人などを率いて、様々な神事を取り総べ、天太玉串を捧げて供奉させた。
斎宮を宇治県の五十鈴川上の大宮の際に興し、ヤマトヒメを居らしめた。また八尋機屋を建て、天棚機姫神の孫八千々姫命にアマテラスの御衣を織らせた。
これを宇治機殿と号す。今の機殿神社、神服織機殿神社と神麻績機殿神社の起源。
次に、櫛玉命、大年神、大山津見山神、朝熊水神などが饗を奉るところに神社を定め、イザナギとイザナミが捧げ持つ白銅鏡二面の神宝を留め置いた。
内宮摂社の朝熊神社と、その対岸に位置する内宮末社の鏡宮神社である。
ヤマトヒメが探り当て、整備を進めた地が、アマテラスのお眼鏡にかなったことを意味する。
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