皇大神宮(内宮)近辺を流れる五十鈴川
倭比売命(倭姫命、やまとひめのみこと)が「奈尾之根宮」におり、諸神から御饗が奉られた、その時、猿田彦神の末裔、宇治土公(うじのつちぎみ、うじとこ)の祖の大田命(おおたのみこと、太田命とも)が現れた。

ヤマトヒメは、
「汝が国の名は何ぞ?」
と問うと、大田命は、
「さこくしろ(非常に素晴らしい、世界の中心)宇遅の国」
と答え、御止代の神田を進呈した。ヤマトヒメが、
「佳き宮の場所はあるや」
と問うと、大田命は、
「非常に素晴らしい、世界の中心である宇遅の五十鈴の河上は、大日本の国の中にも殊勝なる霊地です。その中に、38万歳にもなる翁でも見知らない霊物がございます。光り輝くこと日の如し。思うに、そんじょそこらのものではございますまい。定めた主が出現なさった時に献じられるよう、お祀りしていました」
と答えた。

そこでヤマトヒメはその場所に行って、霊物を見てみると、昔、天照大御神(皇太神、大神)が誓願した、豊葦原瑞穂国の内の伊勢の風早(かさはや)の国に美しい宮の場所ありと見定めた、天上から投げ降ろした天の逆太刀・逆桙・金鈴などが、そこにあった。

ヤマトヒメは大喜びでこの地に決めた。

つまり、現在の伊勢の神宮(伊勢神宮)の皇大神宮(内宮)である。

苦節30年、ヤマトヒメはついに約束の地にたどりついたことになる。

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