江包・大西の御綱(えつつみ・おおにしのおつな)
種別1:風俗慣習
種別2:年中行事
公開日:毎年2月11日
指定日:2012.03.08(平成24.03.08)
都道府県:奈良県
所在地:桜井市の江包地区と大西地区

江包・大西の御綱は、奈良県中部の奈良盆地東南に位置する奈良県桜井市の江包地区と大西地区に伝承される習俗である。御綱祭りなどとも。

年頭に当たって五穀豊穣と子孫繁栄を祈願する行事であり、集落に降りかかる災厄を消除することを目的に行われる行事の一つで、もとは旧暦1月10日に行われてきたが、近年は2月11日に両区の合同で行われる。

両区は初瀬川をはさんで北と南に向かい合っている。江包区が男綱、大西区が女綱をつくって両区の境付近にある素盞嗚神社に持ち寄って両綱を合体させて吊す。

この行事の起源については、昔、大出水があって神様が上流から流れてきたときに、大西は稲田姫(クシナダ)、江包は素盞嗚尊(スサノヲ)を救い上げて祀り、この二神が年に1度正月に結婚すると伝承されていることによる。この伝承があるため、江包と大西は昔から縁組みをしないといわれている。

行事前の2月9日には江包で男綱作りが行われる。区内の50戸ほどの家から1人ずつ参加し、区の中央に位置する春日神社で行われ、各家は藁1束、区長、副区長、区議員の役員は2束ずつ持ち寄る。

大西の女綱作りは2月10日に区内の90戸ほどの家から1人ずつ参加し、区の中に祀られている市杵島神社に合祀されている御綱神社の前の小屋で行われる。藁は以前は各家から持ち寄ったが、現在は役員が区所有の田から藁を入手している。

男綱作りも女綱作りも忌みのかかっている者は参加できない決まりであり、綱作りには参加しない。

2月11日。大西では御綱神社の前で祭りを行い女綱をかつぎ出す。この女綱を先導するのは、世襲でナコウドを務める大西在住の喜田氏の当主。女綱は区内を進み、途中で結婚や家の新築など、祝い事のあった家々をまわり、祝いをする。

区内のはずれに近い初瀬川沿いまで来ると女綱を田の中に下ろし、女綱をまるく土俵のように広げてからかついできた人たちが泥田の中で相撲を取る。この時泥がつけばつくほどその年は豊作になるといわれている。

相撲が終わると再び女綱をかついで出発し、江包の素盞嗚神社に向かう。素盞嗚神社に到着するとナコウドの喜田氏が江包の春日神社まで使いに立つ。この使いを七回半の使いといい、素盞嗚神社から春日神社まで七回半呼び使いに行くものとされている。この七回半の使いが出ている間に、大西ではかついできた女綱を素盞嗚神社の社前にある古木にくくりつけ、女綱の舟形の部分を広げて江包の男綱が到着するのを待つ。

江包の男綱は大西からの七回半の使いが来る前に春日神社を出発し、区の東側にある池の堤に向かい、そこから区の南側を通って相撲を取る相撲場と呼ばれている田まで向かう。途中区内で結婚や家の新築など祝い事のあった家をまわって祝いをする。田につくと男綱をおろし、かついできた男達が泥田の中で相撲を取り始める。男達は泥だらけになるが、江包でも泥がつけばつくほど豊作になるといわれている。

我が国の年中行事には、年頭に当たってその年の豊作や安泰を祈願して行われる行事が数多くみられる。本件も年の初めに当たって行われる、一年間の豊穣を祈願し、集落に降りかかる災厄を消除することを目的とした行事である。

近畿地方に分布する綱掛け行事の典型例の一つであり、我が国における年頭に当たって行われる行事の特色や地域的分布を考える上で重要である。

保護団体名:江包・大西の御綱祭り保存会
重要無形民俗文化財「江包・大西の御綱」 - スサノヲとクシナダの1年に一度の結婚
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