但馬久谷の菖蒲綱引き(たじまくたにのしょうぶつなひき)
種別1:風俗慣習
種別2:娯楽・競技
公開日:毎年6月5日
指定日:1989.03.20(平成1.03.20)
都道府県:兵庫県
所在地:新温泉町久谷地区

但馬地方に伝えられてきた綱引き行事は、五月節供に行われるものと八朔に行われるものとに大きく分けられるが、現在は前者が比較的よく伝承されているのに対して、後者はほとんどが消滅してしまっている。

五月節供の綱引きでは、菖蒲・よもぎなどを綯い込んだ綱を引き合うこと、何らかの形で子ども集団が綱引きに関与することに共通点がある。

但馬久谷の菖蒲綱引きは、兵庫県新温泉町久谷地区において、世代を重ね毎年繰りかえされてきた綱引き行事で、現行では、6月5日(往時は、旧暦5月5日)の夜8時頃から、通称ナカミチと呼ばれる久谷川と瀬間川にはさまれた公道上で行われる。

その準備は、当日の日中になされ、ナマクサ(各家で宵節供に軒下に挿したり屋根にあげたよもぎ・すすき・菖蒲の束)を集め、綱作りと続く。

子ども集団がナマクサ集めを担当し、大人組がそれに稲藁を補って三つ組の綱に仕上げる。引き綱は、ほぼ同形の2本の綱の頭部を折り曲げ、繋ぎ合わせたもので、全長約40メートル、最大直径約30センチである。

綱引きは、子ども集団と大人組の対抗でなされる。子どもが南に、大人が北に陣取り、その位置を変えることなく、7度引き合う。

勝負は1回ごと1番で決められるが、その間に石場搗き唄が7節ずつ歌われる慣わしで、それに合わせ、引き綱を持ち上げ、地面に打ちつける。

こうした要領で綱引きが進行するが、特に最後の綱引きをオサメヅナ(納め綱引き)と称して重視され、大人組が勝を制することで豊作だと占ったといわれている。引き終わった後、引き綱を道路脇に蛇巻きにして積み、行事をしめくくる。

この行事は、ノボリタテ(幟立て。過去1年間に結婚した者の家へ青年たちの手で幟を立てる)に続いてなされるもので、ナマクサなどで綯った綱を年齢集団間の対抗という形で引き合う点に特色がある。

年占的要素に加えて災厄除けの意識が明確であり、地区発展の祈願が込められている。日本海沿岸に濃密な分布を示した五月節供の綱引き行事の典型例の一つとして重要である。

保護団体名:久谷菖蒲綱保存会
重要無形民俗文化財「但馬久谷の菖蒲綱引き」 - 年齢集団間の対抗戦、災厄除けが特徴
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