長野県諏訪市の諏訪大社上社本宮に2015年6月25日、御柱を題材に描いた日本画の大作が奉納されると言います。古代の上越地方を治めたと古事記に記されている翡翠の女王、奴奈川姫をテーマに作品を描き続ける新潟県上越市在住の女性画家川崎日香浬さん(37)が描いたもの。「画材を通して越の国(越前、越中、越後)と諏訪の国をつなげられたと思います」と話しているようです。読売新聞が報じています。動画は2010年、下社における御柱曳行の様子。

『古事記』に奴奈川姫(ヌナカワ)は登場しますし、重要なヒロインの一人ではありますが、『古事記』自体に「古代の上越地方を治めた」「翡翠の女王」とあるわけではありません。

古事記において、ヌナカワはオオクニヌシの段にぱっと登場し、恋愛歌を交わし、オオクニヌシと結ばれるという流れのみが描かれ、それらの歌に描かれた情景は生々しいものがありますが、その他の描写は一切ありません。

こんな単純な恋愛譚ではないだろう、と、後世、意味が付されて、おそらくヌナカワ姫は越の国を治めていた首長で、オオクニヌシの妻問いはその併呑あるいは併合を意味し、その財源はその地方の特産のヒスイ(翡翠)だろう、と考えられた、ということであはります。

越の国と諏訪の国がヌナカワによってつながっている(諏訪大社の御祭神は、オオクニヌシとヌナカワの子とされるタケミナカタ)し、川崎さんのお考え自体は神話と現代を結ぶ非常に貴重な試みです。

それはさて置き、奉納に先立って6月19日-24日、茅野市美術館市民ギャラリーで披露されるそうです。絵は、「御柱曳行絵図~式年御造営諏訪大社御柱祭~」(横5.4メートル、縦1.1メートル)という大作。あの勇壮な御柱曳行が実際にどのように描かれているのか、非常に楽しみです。

来年2016年はとうとう6年ぶり(7年に一度)の御柱祭。諏訪大社でも御柱祭の雰囲気が強まりつつあるようです。

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