
神社への参拝は日本人にとってごくごく当たり前で、日本全国多くの神社が何らかの形でこのスサノヲをお祀りしている場合が多いため、日本人でお会いしたことがないという人はいない神の一柱であるとも言えるかもしれません。ヤマタノオロチ退治で知られる、日本神話のスーパースター。
しかし、一口でスサノヲ、と言っても、現在までに実に様々な形で、日本全国にお祭りされており、そしてここが重要ですが、それぞれでご神徳が違い、つまりご利益が違ってきます。「スサノヲだからこれをお願いしておこ」という訳にはなかなかいきません。
ここでは、そんな迷いを失くす、ざっくりとしたスサノヲの日本全国での祀り方について、分類して、紹介したいと思います。
■スサノヲの本宮 - 須佐神社など
[ポイント]諸願成就
島根県出雲市の須佐神社は日本有数のパワースポットとして知られています。言葉は悪いですが、現在では辺鄙な場所で、交通の便が必ずしも良くないにもかかわらず、365日、日本全国からの参拝客が絶えないといいます。
同じように、同松江市の八重垣神社、同雲南市にある斐伊神社、須我神社、そして日本全国に分布する須賀神社(後述の牛頭天王スサノヲ系統でもあります)など、これらはスサノヲがヤマタノオロチを退治して、クシナダと結ばれるという、古事記のクライマックスの一つであるストーリーまでに関連した神社。
大半の日本人がスサノヲと聞いて思い浮かべるそのものの姿がいらっしゃる神社となります。その意味で、スサノヲの本宮とも言うべき神社であって、そのご神徳は神話の英雄としての広大無辺、所願成就となります。
■黄泉がえりの熊野 - 熊野三山など
[ポイント]命の洗濯
島根県松江市に出雲大社と肩を並べる出雲国一宮・熊野大社があります。こちらが元宮との説もありますが、有名なのが、熊野三山。どちらにしても、古事記にも描かれている、スサノヲが根の国に覇を唱えている頃の、スサノヲの姿を描いたものが基盤になっているものと考えられます。
熊野信仰は複雑な体系の上に成り立っているので、スサノヲだけで説明するのは不適な面もありますが、例えば、熊野三山は「甦りの地」として信仰されています。甦りは黄泉がえり、黄泉から帰ってくる、ということ。黄泉(根)の国にいるスサノヲ(など)に参拝して、そのご神徳を受けて、現世に戻って来る、というのが、語弊を恐れず極めて簡単に言ってしまえば、熊野信仰の核です。
根の国の王で、愛娘スセリビメとともに、やって来た自分の子孫オオクニヌシをイジメる、ではなくて、先導した、成熟の男神の姿がそこにあります。日本屈指の聖地で、世界遺産登録を経て、今や世界的な聖地の仲間入りを果たした熊野三山。まさに「命の洗濯」の場所です。
■牛頭天王スサノヲ - 八坂神社、津島神社など
[ポイント]厄除け、厄祓い、無病息災
スサノヲと言えば牛頭天王。蘇民将来です。各地にある天王社などもこの系統です。こちらの部分は、古事記とはあまり関係なくなり、渡来神的な要素が強くなり、それが仏教とも習合した結果のスサノヲの姿と言えるでしょうか。
また、無理に言えば、高天原で大暴れするまでのスサノヲの姿でしょうか。古事記でも疫病神的に描かれているとも言えます。大きな疫病神の力を借りて、その他の厄を払いのける、茅の輪くぐり、“天王”に関するものがこれに当たります。
京都市の通称“祇園さん”八坂神社の祇園御霊会・祇園祭、東海地方にはなじみ深い天王祭・津島神社、各地に残る茅の輪の風習など、厄祓い、無病息災などの御神徳を発揮する尊い神スサノヲの姿がそこにはあります。
■関東開拓者の神 - 氷川神社
[ポイント]縁結び、恋愛運
関東で、特に埼玉、東京でスサノヲと言えば、氷川神社でしょうか。江戸期には江戸七氷川の呼称もありました。武蔵国一宮、皇室からも崇敬される、さいたま市大宮の氷川神社が元宮です。もともとはスサノヲを信奉する出雲系民族の関東入植者による信仰だと思われ、スサノヲとクシナダ、オオクニヌシをともに祀るのが基本形としてあります。
スサノヲとクシナダのほのぼの夫婦にあやかって、またその子孫で、“恋”と言えばこの神オオクニヌシ(出雲大社)もいらっしゃるので、氷川神社の多くは縁結び、恋愛運向上のパワースポットとなっていることがあります。川越氷川神社はまさに典型的。
その意味では先に挙げた八重垣神社が好例。スサノヲ、クシナダと言えば、牛頭天王スサノヲの分類にはなりますが、全国にある八雲神社も同じ系統になります。
まれに、氷川神社でもクシナダやオオクニヌシを祀っていない場合などもありますが、関東の興隆は、出雲系民族の功績も小さくなく、WinWinの関係が築かれた、だからこそ氷川神社が埼玉・東京各地に祀られているということだと思います。スサノヲと関東の歴史的な“出会い”を氷川神社が象徴していることには変わりありません。
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以上はあくまでもざっくりと分類したものです。文中にも触れているものもありますが、ここまできれいに割り切れるものではなく、それぞれが交差していることも珍しくありません。また神社各社にはそれぞれ由緒などもありますので、当てはまらない場合もあると思いますが、おおよそのところで、神社参拝の参考になれば。
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