日本遺産 - Googleマップ
今回初めて認定された「日本遺産」18件の分布をみると、北海道と沖縄、それに東北地方からの認定がありませんでした。世界遺産「平泉」も落選、という結果に、「日本遺産」の既存の制度との違いが鮮明になっている感もあります。

北海道はそもそも申請が一件もありませんでした。沖縄は一件のみ、「民話と神話の里やんばる」、残念ながら落選です。東北は次の五件です。

・「平泉と義経」(岩手県平泉町)
・「多賀城市 みちのくの都・多賀城と歌枕-都人があこがれ、芭蕉が泪したみちのくの風雅-」(宮城県)
・「最上川舟運が育んだ文化と景観 ~人々が川とともに創り上げた歴史・文化・景観を今に伝える唯一の川・最上川~」(山形県)
・「日本最大の蚕室群 松ヶ岡開墾場 ~庄内藩士の開拓精神とジャパン侍シルクの源流」(山形県鶴岡市)
・「仏都会津 ~徳一と会津の仏教遺産群~」(福島県)

この五件が多いのか少ないのか一概には言えませんが、例えば、石川県は関連自治体含め十二件も申請、そのうち一件が認定されています(「灯り舞う半島 能登 ~熱狂のキリコ祭り~」)。

こうした制度にはよくある、一回目の様子見、それに基づく各自治体の温度差ということもあったのかと思います。かの世界遺産も、当初は今ほどは注目されなかった、その観光などへの波及効果の甚大さが注目を引いた、という側面があります。

ハコモノとは違い、「日本遺産」はストーリー重視。いわばソフトパワーであり、それ自体は日本の特質にマッチしていると言えます。一方で、こうしたソフト的なものを観光企画コンセプトやパッケージに埋め込むことは、ハコモノほどは容易ではないことが予想されます。

認定はされたがその後の波及効果いかんで、「日本遺産」の今後が変わってくることが予想されますが、今回、マスコミ各社がこぞって一斉に報道していることから、自治体の取り組み方も変わってくるかもしれず、そうなると想定していなかった「日本遺産」効果が生まれ、「日本遺産」のステータスが上がってくる可能性も否定できません。

さて、東北ですが、詳細な内容は不明ながら、申請のストーリータイトルを見る限り、“ジャパン侍シルク”とのネーミングも飛び出したり、魅力的なものも多く含まれています。しかし、やはりハコモノではない、「日本遺産」の特異さ、平泉が落選というのは大きな象徴的な意味があると思います。

浄土世界観を推した世界遺産とは違い、源義経との関連を強調したと思われる「平泉と義経」。しかし、今回認定されたものを見ると、著名人という“個”よりは、どちらかといえば長い年月かけてその地で根付いた“民俗”的なものが多くを占めます。

岐阜市の「「信長公のおもてなし」が息づく戦国城下町・岐阜」は、織田信長を売りにしているように見えますが、ポイントはそこではなく、“おもてなし”という日本の最新“民俗”が中心であり、信長と“おもてなし”というギャップを突いたところにストーリーとしての広がりを感じさせます。

ギャップ、というのは、こうしたストーリー重視の認定の場合、有効な手段です。その点が「平泉と義経」にはあったのかどうか。詳細は不明ですが、ギャップに限らず、次回選考に向けての様々な視点が今回の認定に盛り込まれているような気がします。

第一回目の認定となった「日本遺産」が今後浸透し、普遍的な制度になっていくかどうかは、今回認定された自治体や民間企業による努力が大きくなってくるかとは思いますが、やはり同時に、次の申請を考えることも地元自治体は必要になってきます。

今回一件も認定されなかった東北、そして北海道、沖縄は、日本の他の地にない特徴的なストーリーの宝庫であることは間違いなく、次回の認定に向けて頑張っていただきたいと思います。

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