江名子バンドリの製作技術(えなこばんどりのせいさくぎじゅつ)
種別1:民俗技術
種別2:衣食住
公開日:-
指定日:2007.03.07(平成19.03.07)
都道府県:岐阜県
所在地:高山市江名子町

江名子バンドリの製作技術は、岐阜県高山市江名子町に伝承される、バンドリと呼ばれる蓑を製作する技術である。

バンドリは、冬の間の農家の副業として製作されてきたもので、稲藁の穂先やシナの木の樹皮などを材料として作られ、軽量で、夏は涼しく冬は温かい仕事着として雨の日の農作業や山仕事などに用いられてきた。

肩編みや首折り、上編みなど手間のかかる工程で編み上げられ、江名子で作られたものは、上等の蓑として飛騨地方一円に古くから知られていた。

この蓑の呼び名であるバンドリとは、飛騨地方でムササビを意味する方言であり、それを身につけた人の姿がムササビに似ていることからその名がついたといわれている。

江名子川の冷たい水を田に引いての米作りは、十分な収穫量に恵まれず、冬場のバンドリ作りが農家の生計を支える貴重な収入源であった。第二次世界大戦後は、江名子町の西側の地域が市街地化していった影響により、現在、バンドリの製作は町の東側にあたる上江名子地区を中心に行われている。

バンドリ製作の起源は、伝承によれば江戸時代初期に遡るとされる。寛文年間(1661-1662)に江名子村に移り住んだ加藤源十郎という陶工が江名子村民にその作り方を伝えたのが始まりとされ、彼の墓が残る瀬戸ヶ洞にはバンドリの由来碑も建てられている。

また、高山出身の国学者、田中大秀がバンドリを源十郎が伝えたことを天保10年(1839)に記しており、そこには「田蓑」「波牟登利(ばんどり)」の表記がみられる。いずれにしても、その製作技術は門外不出とされ、江名子の人々の間に代々伝えられてきた。

江名子バンドリは、肩と腰の部分が別々に編まれる形態と、肩から腰までが一続きに編まれる形態とに大別される。前者はハナレあるいはコシハナレ、後者はコシツヅキと呼ばれる。このうち、ハナレと呼ばれるバンドリが製作工程も多く、仕上げるのに手間がかかり、特に上等の蓑として飛騨地方一円から買い求められた。

この技術は、厳選された素材と手間のかかる工程で編み上げられ、類例が少なく、全国的にも注目されるものである。

蓑の製作については、日本列島において広く行われてきたが、本件は、原材料となるニゴの採取をはじめ、シナの皮剥きやアク取り、乾燥による色出しなど、よりよい素材を得るための種々の工程がみられ、また、首折りや上編みなど熟練を要する技術を伝えていて、我が国の衣生活に関する民俗技術を考える上で重要である。

蓑の製作技術という地域の生活に根ざした基盤的な技術のあり方を考える上でも注目されるとともに、伝承基盤が脆弱な技術伝承の分野にあって、伝承状況も良好で保存継承の体制も整っており、今後の伝承も大いに期待される。

江名子バンドリ(製品)とその製作用具は、昭和50年9月3日に重要有形民俗文化財に指定された「飛騨の山村生産用具」(989点)の一部を構成している。

保護団体名:江名子バンドリ保存会
重要無形民俗文化財「江名子バンドリの製作技術」 - 厳選素材と手間かかる工程は希少
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