日本人はどこからきたか (講談社現代新書 265)
・刊行:1971/11
・著者:樋口隆康
・出版:講談社

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シルクロードの遺跡調査や古代の鏡の研究で知られる京都大名誉教授で前奈良県立橿原考古学研究所長の考古学者、樋口隆康(ひぐち・たかやす)さんが2015年4月2日、老衰のため亡くなりました。95歳。数々の研究を行ってきた偉大な学者であり、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

本書は、その代表作ではないが、珍しく、古代日本を正面切って論じた一冊。少し古く、内容も賛否両論がある(当時から)ものの、紹介します。

日本人の起源は永遠の謎である。日本は古来文化のルツボであった、流れこむばかりでそこから出て行くことのない――。このルツボのうちそとの謎に、多くの先人が、果敢に挑み、先住民説・原人説・混血説などを説いた。本書は発掘物・言語など豊なデータをもとに、精密な推理を進め、江南要素を重視する。

〈日本人の起源に関する諸説〉歴史的にみると、まず、日本島には日本人以前に先住民がいたという、先住民論があり、その先住民がいかなるものであったかをめぐって、アイヌ説・プレアイヌ説・コロボックル説などがあらわれた。

さらに日本人混血説をへて、ナショナリズムとのからみあいもあって、日本島には最初から日本人がいたとする日本原人論があらわれた。最近になって騎馬民族征服説なども出されたが、もちろんこの世界には、確たる定説はない。

化石人骨・血液型・言語・石器・土器・各種の道具、そして稲作の問題など複雑なファクターを比較検討しながら、本書では、日本人の祖型には江南要素が濃厚であると結論する。

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