今さら邪馬台国10 - 日向生まれと思われる、初代神武天皇の前妻との間の皇子タギシミミ、「みみ」の系譜に触れる
魏志倭人伝の、「1.距離方角」に掲載された、邪馬台国やその国々の官(長官と副官)です。論争の時重視されることもあります。

対馬国:官が卑狗(ひこ)、副が卑奴母離(ひなもり)
一大国:官が卑狗、副が卑奴母離。記載はなく、「官は対馬国と同じ」とある
末廬国:記載なし
伊都国:官が爾支(にき)、副が泄謨觚(せもこ)、柄渠觚(へくこ)
奴 国:官が兕馬觚(しまこ)、副が卑奴母離
不弥国:官が多模(たも)、副が卑奴母離
投馬国:官が彌彌(みみ)、副が彌彌那利(みみなり)
邪馬台国:官が伊支馬(いきま)、弥馬升(みましょう)、弥馬獲支(みまかくき)、奴佳鞮(なかてい)
狗奴国:官が狗古智卑狗(くこちひく)

このほか、伊都国には特に、「王がいる。皆、女王国に属する。帯方郡の使者の往来では常に駐在する所」という説明がついています。

その伊都国のみ、副官が二人記載されています。一般的には副官が二人体制なので、その地の重要性が高かったため、とも思われます。

伊都国は、王がいたり、後に触れる一大率が置かれたり、でも戸数(人口)は少なめ、という不思議な国で、論争のポイントになる場合が多くあります。

邪馬台国は副官の記載がなく、官のみが異例ですが四つ記載されています。それだけ特別、ということだと思われます。

頻出する「ひなもり」は、「ひな」(鄙びている→遠方)と「もり」(防人<さきもり>など、防衛のための職)などの解釈があります。

同じく、「ひこ」も、古事記でも頻出する、古代日本の男性名などに多いもので、それとの関連が指摘される場合があります。

投馬国にしか出ない「みみ」も古事記では頻出します。特に印象的なのは、アマテラスの子で天孫ニニギの父であるアメノオシホミミ、初代神武天皇の子らである、タギシミミ、キスミミカムヤイミミ、カムヌナカワミミ(後の第二代綏靖天皇)。いずれも日向や阿蘇に関わり深い名前、と括ることはできるかもしれません。

女王国の南にあるとされる、狗奴国の官が「くこちひく」。「きくちひこ」(菊池彦)と読めば、北・中央九州説寄りに、「かわちひこ」(河内彦)と読めば畿内説寄りにはなります。

この官に限りませんが、今のところ現代日本語読みで表記していますが、当時の日本語、あるいは当時の中国語、さらには当時の朝鮮語で読むべき、など百家争鳴なのが現状です。

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