古事記と北陸ということですぐに思い浮かべるのが、オオクニヌシとヌナカワ姫のラブロマンスです。古事記の中の恋愛譚でも、まず間違いなく五本の指に入る説話。神代とは思えない、非常に艶めかしさが漂う話として有名です。
現在でも、新潟県糸魚川市では多くの伝承が残され、多くのイベントが毎年開催されています。まさに北陸新幹線のルート、今後もっとよく知られる説話になってくるかもしれません。
画像は糸魚川市の公式ページ。奴奈川姫(ヌナカワ)がもはや市のシンボルともなっていることは、サイトのタイトルバナーに使用されている銅像の写真からも明らかですね(出典:糸魚川市公式サイト)。
古事記には、オオクニヌシが越の国の美女神ヌナカワに“夜這い”に行った話が掲載されています。“夜這い”というとあれですが、ニュアンス的には婚姻申し込み、プロポーズのことだと思われます。
オオクニヌシが非常に熱烈なラブレター(ラブソング)を送り、それにヌナカワがやはり歌で応えます。ヌナカワの一首目は少し焦らしたもの、二首目は受け入れるものとなっています。内容が、少しエロいです。
古事記の流れ的に、スサノヲが固めた出雲大国を、スサノヲから受け継ぎ(喧嘩別れ的にも見えますが)、黄泉の国から帰ってきたオオクニヌシが、領土を拡大していく際に出てくる説話であり、ラブロマンス・オペラの形態をとりながらも、実際は出雲による越の国への侵攻を描いたものと思われます。
出雲から糸魚川の間、特に北陸地方においては、オオクニヌシがその地を平定した、などの伝承が数多く遺されており、まさに、「オオクニヌシがヌナカワに通った道」という表現にふさわしい土地柄を形成しています。北陸新幹線の長野-金沢延伸ルートはまさにその一部に含まれます。
侵攻とは穏やかではないですが、ラブロマンス・オペラにオブラートされたということから考えると、比較的平和裏な出雲-北陸の統合・連合だったのかもしれません。
また、古事記においてはヤマタノオロチの出雲への圧力と、スサノヲによるその払拭以来の、両地の蜜月を示したとも言えます。
この頃までの古事記において、九州や大和の話は限定的。まさに、出雲―北陸・上越の日本海側が日本の主要地域だったことが分かります。特にヌナカワの故郷である糸魚川は古代日本唯一の翡翠(ヒスイ)の産地とされ、それが財源となって巨大な権力を構成していたことは想像に難くありません。
二人の子とされるのが、現在は諏訪に鎮座するタケミナカタ。糸魚川市の銅像にもヌナカワにしがみついている子どものタケミナカタが見えます。古事記ではあまり格好良い描かれ方とは言えませんが、実際には出雲―北陸・上越の連合を象徴する首長だったと思われます。
古事記には記載があるからまだよいですが、日本書紀はタケミナカタを完全に無視して記載がありません。なのに、率先して極めて丁重にタケミナカタを祀っている大和政権。記載に憚りがあるほど脅威だった(卑劣なことをしたので後ろめたい)、ということかもしれません。
タケミナカタのその巨大な権力(と大和政権のタケミナカタに対する後ろめたさ?)が諏訪はもとより、各地で祀られ、そして信濃―上越、北陸の一部では特に厚く祀られている要因となっているのでしょう。
北陸新幹線と古事記[一覧]
・ヤマタノオロチは“北陸”出身だった! 出雲 VS 北陸の戦い描いた?
・古事記の白眉! オオクニヌシとヌナカワ姫のラブロマンス・オペラ
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古事記には、オオクニヌシが越の国の美女神ヌナカワに“夜這い”に行った話が掲載されています。“夜這い”というとあれですが、ニュアンス的には婚姻申し込み、プロポーズのことだと思われます。
オオクニヌシが非常に熱烈なラブレター(ラブソング)を送り、それにヌナカワがやはり歌で応えます。ヌナカワの一首目は少し焦らしたもの、二首目は受け入れるものとなっています。内容が、少しエロいです。
古事記の流れ的に、スサノヲが固めた出雲大国を、スサノヲから受け継ぎ(喧嘩別れ的にも見えますが)、黄泉の国から帰ってきたオオクニヌシが、領土を拡大していく際に出てくる説話であり、ラブロマンス・オペラの形態をとりながらも、実際は出雲による越の国への侵攻を描いたものと思われます。
出雲から糸魚川の間、特に北陸地方においては、オオクニヌシがその地を平定した、などの伝承が数多く遺されており、まさに、「オオクニヌシがヌナカワに通った道」という表現にふさわしい土地柄を形成しています。北陸新幹線の長野-金沢延伸ルートはまさにその一部に含まれます。
侵攻とは穏やかではないですが、ラブロマンス・オペラにオブラートされたということから考えると、比較的平和裏な出雲-北陸の統合・連合だったのかもしれません。
また、古事記においてはヤマタノオロチの出雲への圧力と、スサノヲによるその払拭以来の、両地の蜜月を示したとも言えます。
この頃までの古事記において、九州や大和の話は限定的。まさに、出雲―北陸・上越の日本海側が日本の主要地域だったことが分かります。特にヌナカワの故郷である糸魚川は古代日本唯一の翡翠(ヒスイ)の産地とされ、それが財源となって巨大な権力を構成していたことは想像に難くありません。
二人の子とされるのが、現在は諏訪に鎮座するタケミナカタ。糸魚川市の銅像にもヌナカワにしがみついている子どものタケミナカタが見えます。古事記ではあまり格好良い描かれ方とは言えませんが、実際には出雲―北陸・上越の連合を象徴する首長だったと思われます。
古事記には記載があるからまだよいですが、日本書紀はタケミナカタを完全に無視して記載がありません。なのに、率先して極めて丁重にタケミナカタを祀っている大和政権。記載に憚りがあるほど脅威だった(卑劣なことをしたので後ろめたい)、ということかもしれません。
タケミナカタのその巨大な権力(と大和政権のタケミナカタに対する後ろめたさ?)が諏訪はもとより、各地で祀られ、そして信濃―上越、北陸の一部では特に厚く祀られている要因となっているのでしょう。
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