伊勢神宮の成立 (歴史文化セレクション)
・刊行:2009/6
・著者:田村圓澄
・出版:吉川弘文館

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五十鈴川のほとりに鎮座する伊勢の神宮

天照大神(天て明日)が皇祖神としてこの地に祭られた背景には、古代天皇を中心とした律令国家の構築という政治的意図があった。

伊勢神宮の創立の歴史を解明し、その本質を問い直す。

管理人了
タイトル的に少し期待したが、下記の二点において失望、というより、目新しい点は何もなく、今時であればネットですべて収集できるレベルか。

1.雄略以前の斎宮起源に関しては、すべて説話(伝説?)として、何も触れていなさそう。であれば、どうしてそうした説話が生まれたのか、説明しなければ、意味がない。。

2.サルタヒコの一言も出てこない。

伊勢神宮は持統天皇とその御世の創建、とのこと。その前史は、地方的な日神信仰。祖霊崇拝する神も場所もなかった天皇が初めてそれができるところが神宮、だそうだけど、なんにも謎の解明につながっていない。 

至る所に出典のある津田左右吉の信奉者か。それにしても、津田はもう少し踏み込んだ論もあるのだが。

なお、ことさら本書を批判するつもりはない。近い時期に呼んだ伊勢神宮に関するものがいずれも同系列であって、得るもの少なし。武澤秀一『伊勢神宮の謎を解く アマテラスと天皇の「発明」』、千田稔『伊勢神宮―東アジアのアマテラス』など。

伊勢の神宮の成立に上記二点を避けて通っては何もわからないような気がするが。後者についてはまだよいが(個人的に知りはしたいが)、前者、ヤマトヒメなどの話は全て架空、とするのならそれはそれでよいが、それならば、なぜあんな意味不明な話が作られたのか、説明義務があるように思うが。

そうしたところに伊勢の神宮の核心がある。「持統天皇が創建しました」ということであれば、別に今さら書籍にまとめる必要もないと思う。