この神楽は、作者も出典も不明のようです。恐らく、「大江山絵詞」、お伽草子「酒呑童子(しゅてんどうじ)」といった物より取材し、能『大江山』を翻案(ほんあん)して作ったものと思われます。

丹波(たんば)の国大江山に酒呑童子という悪鬼が配下を従えたてこもり、都はもとより辺りの庶民を苦しめるので、帝は、誉れ高い源頼光(みなもとのらいこう)、渡辺綱(わたなべのつな)、坂田金時(さかたのきんとき)などに命じて、山伏(やまぶし)修験者に変装し、大江山に上り、ついに酒呑童子を退治します。

鬼がたくさんでてくる石見神楽ドリーマーな演目!(出典:なつかしの国 石見

【ぶっちゃけ式解説】
酒呑童子のお話は、ヤマタノオロチを泥酔させて殺したスサノヲの神話と、男の娘に変装して隙を誘って熊襲建兄弟を暗殺したヤマトタケルの説話が合体したようなお話。

いつの時も、朝廷側のやり方は変わらないような。。。まあ、ヤマタノオロチ VS スサノヲはどういう構図かはわかりませんが。

蛇も、熊も、またもそうですが、鬼も、朝廷に対する反抗者という記号でしかないと考えた方がやはりよさそうです。あくまでも朝廷の都合から見たアナーキーな人々。つまり、公家以外はヒトではないとされた時代、当時の人口比でいえば、極めて多くが“鬼”と呼ばれた人々だったことになります。そしてそれが我々の祖先。

歴史に名を残す鬼もまたほんの一握り。もともと武士もそれに限りなく近い(というか、鬼・蛇・熊・蜘蛛などなど、そのままの)人々だったわけで、源頼政の鵺退治もそうですが、酒呑童子も退治された、というよりは、何とか話をつけた、というのが真相だったような気もします。

【関連記事】
「石見神楽」漫画やイラストで分かりやすく伝える解説パンフ完成、ウェブ上でも楽しめる