日御碕(ひのみさき)とも。彦羽根(ひこはね)と言う鬼が船を操り、日ノ本の国を鬼だけの住む国に創り上げようと島根県日御碕から攻めてきます。

それを知った須佐之男命(すさのおのみこと)の末娘・十羅刹女(じゅうらせつにょ)が駆けつけ、異国に帰るよう説得しますが、彦羽根はこれを拒否。戦いとなりついには彦羽根一味を異国へ追い返す神楽です。

浜田以東ではほとんど見かけない演目なので、チャンスがあればぜひとも見てみて! 女性対女性の戦いはまた迫力が違う!?(出典:なつかしの国 石見

【ぶっちゃけ式解説】
日御碕神社のことのようです。スサノヲアマテラスが御祭神ですが、相殿神として、アマテラスとスサノヲの誓約で生まれた五男三女神を祀るという伝承があります。そのうちの三女神が、宗像三女神であり、スサノヲの娘たち。

十羅刹女は仏教における10人の女性の鬼神で、法華経の守護者。だから、本来は10人いるのですが、この演目では、スサノヲの末娘として設定されています。宗像三女神のうち、タギツヒメが相当するようです。

神仏習合に際して、十羅刹女はよく出てくる存在で、スサノヲ絡みでは、クシナダを祀った長崎神社(東京都・豊島区)が江戸期には十羅刹女社と呼ばれていたようです。

出雲神楽「日御碕」では、「出雲の田心姫は幼少時代を石見で過ごしていたが、出雲に悪鬼・彦張が率いる十羅国軍が攻めてくると知って立ち帰り、海岸で八万四千の大軍を迎え撃ち、激戦の末これを撃破した。後に、田心姫は十羅刹女の名を賜り出雲国を守った」とあるので、その変形バージョンで、田心姫=タギツヒメが最初から十羅刹女を名乗っているという形態のようです。

ちなみに、日御碕神社には、オオクニヌシの父アメノフユギヌノカミ(当社では天葺根命、古事記では天之冬衣神)の伝承が残されています。妻であるサシクニワカヒメは子のオオクニヌシが二度死んだ時に二度とも蘇生するのに奔走したことが古事記に描かれていますが、父は名のみの登場。由緒ではスサノヲの御子と伝えるようですが、古事記では五世の子孫になります。

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