この神楽は、源頼政が鵺(ぬえ)という怪物を退治するお話です。平安時代末期、毎夜丑(うし)の刻になるとヒョ〜ヒョ〜と気味の悪い唸りと共に東三条(ひがしさんじょう)の森から黒雲がわき出て、帝の寝所である清涼殿(せいりょうでん)を黒く覆ってしまいます。

帝はそのたびにうなされ、ついには病魔に侵されてしまいました。それは、姿のわからぬ鵺という怪物のしわざ。天皇は、弓の名手である源頼政(みなもとのよりまさ)に鵺退治を命じ、頼政は家来の猪早太(いのはやた)と共に森へ向かいます。

途中いたずらをする猿たちをこらしめ、いよいよ鵺も登場。無事に退治することができました。シリアスな鵺! 猿のコミカルな動き! 緩急を楽しめる2度おいしい演目だよ。(出典:なつかしの国 石見

【ぶっちゃけ式解説】
鵺が日本の文献に登場するのは古事記が初めて。「奴延」と表記されています。

その時は、サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、尾はヘビとは書かれていません。オオクニヌシが越の国のヌナカワに求婚しに行った際に、姫に届けさせたと思われる歌に出てきます。

原意通り、夜鳴く鳥のようで、その時も、やきもきしながら姫の返事を待っているオオクニヌシが、「煩わしいのでぶっ殺したい」対象の筆頭として出てきます。それぐらい辛抱たまらん、というのが伝わってくる、そんな中で使われています。

平家物語に出てくるこのお話、頼政は当初、「バケモノ退治は武士として承ったことがない」とイヤイヤでしたが、勅命なので逆らえず、都に上がり、鵺を退治することになります。

退治できた、ということは、鵺は本当はバケモノではなかったのでしょうね。天皇や公家から見ればバケモノのような、ヒト、だったのでしょう。どんな理由があって、天皇や公家を脅かしていたのかはわかりませんが。

サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、尾はヘビは、とどめを刺した猪早太(井の早太)の、素早い作り物へのすり替えか何か、ということでしょうか。
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