武勇の神、八幡宮の祭神である八幡麻呂を讃える演目です。九州宇佐八幡宮に祀られている八幡麻呂という神様が、異国から飛来した第六天の悪魔王が人々をつぎつぎと殺害しているのを聞き、神通の弓、方便の矢をもって退治します。

正義(神)対、悪(鬼)。石見神楽の代表的な展開の神楽です。くるくる回るぜ!石見神楽の真骨頂!勇壮に戦い舞う姿が、心地よい! (出典:なつかしの国 石見

【ぶっちゃけ式解説】
八幡大神、八幡神は第十五代応神天皇を指します。もちろん古事記には、応神天皇が第六天の悪魔王と死闘を繰り広げる、などの話はありません。むしろ古事記の中でも実はあまり目立たない天皇の一人。

一方で母がかの神功皇后であり、八幡宮にはよく一緒にお祀りされていることもあって、八幡神とはもとよりなじみが深い。それとも絡んでか、八幡神が皇室の祖とされることも多いので、そんな応神天皇の活躍する場面を、という要求に応えたものが、この演目でしょうか。

第六天魔王は仏教用語、もちろん、古事記の時代にはないか、あまり馴染みのないものだったはず。日本で第六天魔王と言えば、かの織田信長。日本を牛耳る武士、凋落する皇室と公家。皇室対武家の構図を暗に示したもの、なのかもしれません。

なお、石見神楽には父である第十四代仲哀天皇が活躍する「塵輪」、祖父ヤマトタケルが活躍する「日本武尊」という演目があります。

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