愛宕神社(東京・港区)の一の鳥居
スクウェア・エニックスは、ブラウザゲーム「戦国 IXA(いくさ)」のプロモーションイベントを2014年12月8日に愛宕神社(東京都・港区)で開催。アイドルグループ「私立恵比寿中学(通称:エビ中)」による“必勝祈願”やトークイベントなどを行ったと言います。インターネットコムが報じています。写真は愛宕神社(東京・港区)の一の鳥居(出典:Wikipedia)。

エビ中は、ももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)の妹分として2009年に結成したアイドルグループ。「戦国 IXA(いくさ)」は、戦国ゲームの草分けとも言うべき、人気武将・合戦ゲーム。アイドルとゲームのコラボに、今回は神社も加わったところに新味があります。

その神社、港区の愛宕神社は、1603年、徳川家康の命により勧請され、設立された神社です。そもそも戦国武将と関わりが深いですね。愛宕信仰は京都市の愛宕山山頂に鎮座する愛宕神社から発祥した、火防の神に対する神道の信仰で、愛宕権現と呼ばれるイザナミと勝軍地蔵が習合した神を祀ります。

この勝軍地蔵、地蔵菩薩の一つですが、愛宕信仰のもともとの火伏せとしてだけでなく、勝軍地蔵の武神の神としての側面が加味され、信仰が発達。もともと勝軍地蔵への信仰が厚かった徳川家康によって江戸に勧請されたものです。

一説によれば、あまりのも有名な直江兼続の愛を象った兜は、この愛宕信仰から来ているともされ、戦国武将にとっては非常にポピュラーな神様だったことが分かります。

さて、古事記との兼ね合いで言えば、愛宕信仰の防火を示すものとして、イザナミとカグツチがいます。火の神カグツチを産んだ時、イザナミは女陰を負傷してしまい、それがもとで死んでしまう、という神話です。

愛宕信仰のそもそもはこの神話が原型であり、現在でも愛宕信仰ではカグツチが祭祀されますし、そもそも港区の愛宕神社の御祭神はこのカグツチ(火産霊命)。逆に、イザナミが配祀もされていないという珍しい形態と言えます。配祀には、やはり武の神ともされるヤマトタケル、火の反対である水の神として有名な罔象女命(みずはのめのみこと)など。

古事記では、イザナミを死なせてしまったことと、その死に悲しんだ父イザナギに斬殺され、その血肉からも神々が生まれたことが記されるにとどまるカグツチ。日本初の火の神であり、日本の父イザナギに追って伏せられるという、恐ろしい火に対する、防火の端緒、その重要さを示す神話としても位置付けられると思います。

そのためか、カグツチそのものが、今では武の神として描かれることがあります。火の激しさがそのまま武神をイメージさせるのでしょう。港区の愛宕神社がカグツチを主祭神としたのは、もしかすると徳川家康が、カグツチが勝軍地蔵のイメージにより重なりやすいと考えたため、かもしれません。

防火・防災に霊験があるとされる港区の愛宕神社。どこまでもカグツチが主役、というそれも愛宕信仰の一つの形態。そこに、今回はアイドルグループ×戦国ゲームのコラボが入り込み、武の要素が注入され、本来の愛宕信仰に近づいた、というところでしょうか。

港区の愛宕神社には、2015年1月7日まで「戦国 IXA」のブースが設置されています。

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