ときわ - 山口藍(大古事記展) - ぶっちゃけ古事記
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・ときわ(トキワ)
・大古事記展 - V.未来へ語り継ぐ古事記

・山口藍
・平成

天からおりてきたニニギサクヤに一目惚れし求婚するが、サクヤの父であるオオヤマツミは姉のイワナガも差し出す。しかしニニギはイワナガの醜さに畏れ送り返したため、オオヤマツミから子孫の命は岩のように堅実であり続けられないと告げられる。

醜さのみの記され、姉妹で差を付けられたイワナガ、しかもその後にはまったく触れられない不憫すぎる彼女が追い返された真の理由、静かに姿を消した幻の姿を想像し、制作されたのがこの作品。

この話の前にニニギの天孫降臨の際、アメノウズメが、あらゆる魚たちにニニギに仕えるか否かを問い、ナマコ以外は「仕える」と答えたが、答えなかったナマコはアメノウズメによってその口を裂かれてしまう。今でもナマコの口が裂けているのはこのため、と。

なぜ天孫降臨の話の中で突拍子もなくナマコの話が入るのか、それはおそらくイワナガがこのナマコの生まれ変わりなのではないだろうか、というが山口氏による考え。

口を裂かれたナマコは口を固くしニニギを恨み続け、そのまま岩になった。その怨念がイワナガを生み、隙をついて反逆するつもりでいたはずが、自分を受け入れなかったニニギに対し、その意図を見破られたことでさらなる侮辱と恨みが重なり、子孫の長命を阻んだのではないか。

決して醜い容姿ではなく、むしろサクヤをもしのぐ美しさだったのかもしれないが、上手だったニニギは惑わされず、子孫短命というリスクはあっても、サクヤが象徴する繁栄の力を得、イワナガは避けられた。

こうした解釈のもと、輝かしいニニギの陰で報われなかったナマコとイワナガを思い、美しい画影として描き残せたら、と思ったという。

三貴子は体外受精説に続き、イワナガ美人説、そしてその裏側に隠された陰謀説。一見奇妙でも、何か説得力がある。山口氏の古事記への深い洞察力がなせる業か。

イワナガは、スサノヲクシナダの子であるヤシマジヌミに嫁いだ、コノハナチルヒメ(やはりオオヤマツミの娘である。名前がサクヤと対をなしている)と同体ではないかとの説も根強いが、こうした神話への新たな、斬新なアプローチ、そしてそれを表現する力こそが、日本神話への深い理解とその普及、「日本人とは?」という最大の疑問を解こうとする原動力にもつながっていくのかもしれない。

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