市辺之忍歯王(いちのべのおしはのみこ)

『古事記』に記載のある男性皇族。

父は第17代履中天皇、母はその妃の一人であるクロヒメ。第一子。

同母弟にミマ、同母妹にイイトヨノイラツメがいる。

子に意祁王(後の第24代仁賢天皇)と袁祁王(後の第23代顕宗天皇)。天皇家の系譜も参照。

歯が折り重なった独特な形をしていたという。それが名前の由来ともなっている。秘匿された遺骸の発見の手がかりともなる。

カラフクロの言上を聞いた第21代雄略天皇(即位前の大長谷命)は、近江の蚊屋野に狩りに出かけることにし、それに随伴した。

現地に到着すると、それぞれに仮宮を立て、その日は休んだ。次の朝、まだ日も出ていない頃、馬に乗りながら、大長谷命の仮宮に立ち、その従者に「まだお目覚めではござらんか。早く起こすがよい。もう夜が明けた。狩場にお出でなさいませ」と告げ、馬を進めた。

この従者が大長谷命に、「ちょっと変だったので、身を気を付けた方がよろしいかと」と告げると、早速大長谷命は完全武装し、馬で進んで、イチノベノオシハに追いつき、問答無用で弓矢で射殺した。

死骸は切り刻まれた挙句、馬の桶に入れて土とともに埋められた。後の雄略天皇の性質である暴虐さを先取り彷彿とさせる殺され方。二人の遺児は逃走する。

後日、置目老媼の協力を得た顕宗天皇によって亡骸を発見され、丁重に葬られた。

宮内庁では古保志塚(滋賀県・東近江市)を、「磐坂市辺押磐皇子墓」としてイチノベノオシハの墓と治定、管理している。

【主な登場場面】
酔いつぶれて寝ていた御殿を放火された履中天皇 家臣に寝たまま担がれて逃走~
いとこの無礼にキレてソッコー殺っちゃった雄略天皇 逃げる二人の御子
因果応報を実行する顕宗天皇 窮地での弁当強奪犯を死刑にし、その一族にも処罰
オヤジの敵だけど元天皇の墓を破壊しようとする顕宗天皇 止めたのは賢兄の機転