宇遅能和紀郎子(うじのわかきいらつこ)

『古事記』に記載のある男性皇族。

父は第15代応神天皇、母はその妃の一人であるヤカワエヒメ。第一子。

同母妹に第16代仁徳天皇の妃で後に皇后となるヤタノ、仁徳天皇に言い寄られるが振って反旗を翻すメドリがいる。

応神天皇の皇太子。

異母兄の大山守命と大雀命が、父の応神天皇から「兄弟の中で、長じた者と、幼き者、どちらを愛すべきか」と問われ、大山守命は「兄」と回答、しかし、大雀命は天皇の御心を察して「兄はすでに長じており心配はないが、弟は幼く、愛すべき」と回答。

これによって、応神天皇は、大山守命を若干遠ざけ、大雀命を重用し、同時に二人にとっては異母弟に当たる和紀郎子を皇太子に指名する。

応神天皇の崩御の後、大雀命から大山守命が反逆を企てているとの情報を得て、迎え撃つ。無防備な大山守命が川の渡しに来ることが予想されたため、船頭に化けて、大山守命を待つことに。

案の定やって来た大山守命と船の上で問答し、騙して大山守命を川に落とす。溺れる大山守命に助命を請う歌を送られるが、それは無視。大山守命、溺死。

死体を川から引き揚げさせて、大山守命を丁重に祀る。

その後、大雀命に皇位を譲ると言ったが、大雀命が固辞。皇位の譲り合いを展開し、海人が困るなど、空位による混乱が起きる。

しかし、和紀郎子が早世し、大雀命が即位する。第16代仁徳天皇。

墓の所在について、『古事記』にはないが、宮内庁によって丸山古墳(京都府・宇治市)が「宇治墓」として治定されている。

八幡若宮四所権現の1柱とされる。他の3柱は、仁徳天皇(大雀命)と、二人の妹とされる宇礼姫久礼姫

【主な登場場面】
自分の子の中で、兄を疎んじ、弟を愛でる応神天皇 理想の女をゲットして有頂天
応神天皇崩御、すぐ兄弟間で戦争へ あの手この手を講じて、勝利は誰の手に?
ものを持っているとうれしいはずなのに、嘆く海人 応神天皇亡き後の混乱

【収録歌】
和紀郎子、自身で討伐した反逆者・大山守命の死に際して歌った歌

【関連記事】
[日本全国]初詣で人気の神社、その人出は? 参拝者数ランキングと、古事記の神々
悲運の皇太子・和紀郎子を祀る世界遺産・宇治上神社が修理完了 屋根新しく、初詣を迎える
【古事記紀行2014】(10)反逆し水没し、遺骸引き揚げられて埋葬された大山守命の墓

【和紀郎子を祀る神社】
宇治上神社 - 国宝「現存最古の神社建築」で応神皇太子・和紀郎子が祀られる
宇治神社 - 重文の神像・莵道稚郎子像がある、応神皇太子・和紀郎子を祀る古社
御香宮神社 - 洛南随一の大祭「伏見祭」で知られ、「御香水」が名高い安産・治癒の神
前鳥神社 - 東国でおそらく唯一、応神皇太子・和紀郎子を御祭神とする相模国四宮
紅葉八幡宮 - 福岡市、応神天皇の皇子も祀る八幡、創建500年を超える早良地域の総鎮守

方違神社 - 堺市“方位のない地”に鎮座する方災除けの神、粽祭など方除けのちまき推し
二宮神社(東かがわ市) - 八幡さま誉田神社の二宮、応神天皇の皇子・皇太子を祀る
琴弾八幡宮 - 源氏の崇敬と378段の参道、大祭では9台の太鼓台が集結して勇壮さを競う
蒲生八幡神社(姶良市) - 和気清麻呂の杖が化した「日本一の大楠」、島津義弘による崇敬
若宮八幡社(杵築市) - 敦実親王お手製の若宮四柱尊像を京から遷座、御田植祭や若宮楽

鶴尾神社 - 香川県最古の古墳・鶴尾神社4号墳が近くにある石清尾山の東南麓の土居の宮
日出若宮八幡神社 - キリシタンの弾圧を受けても村民が祭祀を継続、江戸期の社殿が現存
野木神社 - 田村麻呂手植えの樹齢1200年のイチョウ、12月に提灯もみ祭り、フクロウ繁殖
大日霊貴神社 - だんぶり長者の善行を称えて創祀、奈良期の再建で大日堂舞楽が伝わる
安房神社(小山市) - 忌部氏が阿波から安房へ、安房からたどり着いた地、小山氏の崇敬

菟上耳利神社 - 菟上王あるいは菟道雅郎子を祀る、耳利神社を合祀、菟上遺跡と銅鐸
鎌田神明宮 - 豊受大神が船で渡御してきた地、神宮御厨、遠州の大社、虫封じ

【関連キャラ】
和紀郎子 - 応神皇太子は、貴公子然として朗らかな皇子