大雀命(おほさざきのみこと=仁徳天皇)、異母妹メドリにフラれ、異母弟ハヤブサに寝取られ、反逆された(ハヤブサの乱)、その心情を吐露する仁徳天皇
以前統計して算出した、本サイトの本文における登録タグの集計において、「反逆」、つまり体制に対する反乱、反旗というものですが、それが十ほどあります。

神の世でも、スサノヲ高天原侵攻はアマテラスに対する反逆、と言えるかもしれません。別の切り口で、ニニギが嫁取りにおいてイワナガブサイクと言って実家に帰して、その父オオヤマツミが激怒してニニギの家系に呪詛する、というのも、反逆の一手法かもしれません。ただ、それらは明確ではないので、今回の集計からは除外しています。

そうしていくと、いずれも集計されたものは神武天皇の御世以降、つまり神の世ではなく、人の世になってからですが、それでも天皇や体制に対する反逆が思いのほか多く、この反逆というのも古事記の重要なテーマになっていることは間違いありません。

まずは、その一つ一つを見てみます。

・神武天皇崩御後のタギシミミの反逆[本文

崇神天皇の時のタケハニヤスの反逆[本文

垂仁天皇、義兄に皇后をNTRされ、二人に反逆される[本文

・後の応神天皇、九州から都に戻ろうとした時反逆される[本文

・応神天皇崩御後の大山守命(おおやまもりのみこと)の反逆[本文

仁徳天皇、求愛するもフラれ、反逆されるハヤブサメドリの乱[本文

履中天皇、泥酔・熟睡中に、弟に宮殿に火つけられる反逆[本文

・後の安康天皇、同母妹との近親相姦を理由に皇太子カルミコを追放[本文

・七歳マヨワ、実父の仇として義理の父・安康天皇を暗殺[本文

・後の顕宗天皇、臣下の志毘臣(しびのおみ)に挑発され、成敗する[本文

こうやって見ても、これだけで物語が十分展開されそうな豊富な内容。これに、前回指摘した合体」(タグの数、実に22)も加えれば、古事記は合体と反逆の物語、と規定してもよさそうなぐらい(それでは味もそっけもないので、本サイトでは古代ラブロマンス・オペラの副題を愛用していますが)。

天皇の代替わりごとに無事では済まなかった、古代日本の皇位継承の史実が反映しているのはもちろんでしょう。そこまでの絶対権力もなく、長子相続などのルールや相続に関する前例の蓄積もなかったので、野心を持った第二候補・第三候補があきらめきれずに反旗を翻す、ということは、大から小まで、古代日本にはよくあったことだと思われます。

それでも、古事記を普通の物語(ある程度史実に沿って脚色された)と考えるのであれば、それでも良いのですが、古事記は神の世から連なる天皇家を顕彰している内容と言われる場合もあり、そうなると、反逆が主軸の一つになっていることと矛盾してきます。

反逆を描くにしても描き方というものがあるはずで、それが必ずしも天皇家を顕彰するような描かれ方をしているわけではなく、むしろその逆、という捉え方もできるような描写も数多くあります。

それは次に取り上げた騙し討ち」とも関連しており、そこでも触れていきたいと思います。

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