大久米命(おおくめのみこと=オオクメ)

『古事記』に記載のある男性。

ニニギによる天孫降臨の際、大伴氏の祖神とされるアメノオシヒノミコトと共に武装してニニギの先導をした、久米氏の祖であるアマツクメノミコトの子孫。

初代神武天皇の腹心。

神武天皇が東遷において、熊野の危機を脱し、高木神(タカミムスヒノカミ)が派遣してくれた八咫烏のおかげで、熊野から吉野に達し、ニヘモツノコイヒカイハオシワクノコといった国津神を従いながら宇陀に入った時、エウカシオトウカシの兄弟に遭遇。

服従の意向を聞きに来た八咫烏を、エウカシは鏑矢を射ることで追い返し、戦うために兵を集めるが、集まらず。偽って服従する。そして踏み込んだら崩れるような罠を仕掛けた宮殿を作り、神武天皇暗殺を図ろうとする。

そこでオトウカシは神武天皇側に内通し、兄であるエウカシの企みを暴露。そこで大久米命は、道臣命とともにエウカシの元に派遣され、エウカシを無理やりその宮殿に押し込み、エウカシは自分の仕掛けた罠にはまって圧死。

道臣命と大久米命は、圧死したエウカシの遺骸を引きずり出して、さらに切り刻んだ。結局オトウカシが服従し、オトウカシは宇陀の水取(もいとり)らの祖となる。

オトウカシが催した宴で、初めての久米歌が披露される。

宇陀を抜けて忍坂(おしさか)に入ると、土蜘蛛の勢力圏。神武天皇軍はこれを騙し討ちにすることに。土蜘蛛の乱暴者一人一人に料理人(接待役)一人一人をつけて、歌の合図とともに斬り殺す、というもの。

大久米命に率いられた久米人が、武を担う集団であるとともに、料理にも関係し、また歌って踊る集団でもあることが分かる。

そうして次にナガスネヒコと再戦。そもそも熊野から吉野、宇陀と迂回させられたのは、東遷において関西圏に入って、ナガスネビコの軍とたたかい、敗退したため。

ここで久米人の本領発揮、歌って踊って戦って。この際のナガスネビコとの戦いの勝敗は分からないが、次にエシキオトシキの兄弟の軍も破り、ナガスネビコと最終決戦。これには討ち勝ち、東遷を完了させた。東遷の後半は久米歌によって展開する、と言っても過言ではないほど、歌が溢れ、久米人および大久米命の存在感を高めている。

さて、東遷を完了させたのち、神武天皇は中央に進出してきたので、新たな嫁を取りたいと思い、大久米命に相談する。大久米命はオオモノヌシの娘であるイスケヨリを推薦、この婚姻の段取りをつける。

大久米命の古事記での登場はここまで。

【主な登場場面】
便利な道案内・八咫烏が登場 熊野から大和に進出する神武天皇
敵を歓待して騙し討ち、実兄殺されたリベンジも果たして東遷コンプリの神武天皇
中央進出の神武天皇が改めて嫁取り、絶世の美女の出生譚はまさかのスカトロ?

【収録歌】
大久米命、神武天皇の再度の嫁取りで、天皇に呼びかける歌
大久米命、目の入墨に関するイスケヨリの問いかけに答えた歌

神武軍兵士、東遷でのある戦いの勝利に高揚して歌った歌
久米人、神武東遷である敵の騙し討ちの合図となった歌
久米人、神武東遷でのある戦いで気勢を上げる歌
久米人、神武東遷における日本版「臥薪嘗胆」の歌
久米人、神武東遷で伊勢の神風をめぐる気勢を上げる歌
久米人、神武東遷である戦いで兵士が腹が減った時の歌

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【大久米命を祀る神社】
久米御縣神社 - 久米氏の祖神である天久米命・大久米命、後世に久米寺の鎮守社
久目神社 - 久目部の後裔が久目八ヶ谷を開墾、祖神の大久目命を奉斎、獅子舞

【関連キャラ】
大久米命 - 神武の片腕は斜に構えた万能の自信家