那賀須泥毘古(ながすねひこ)

『古事記』に記載のある男性。

登美能那賀須泥毘古(とみのながすねひこ=トミノナガスネヒコ)、登美毘古(とみびこ=トミビコ)とも。長髄彦。

初代神武天皇による東遷で、浪速国の白肩津まで進軍してきた神武天皇軍と対峙、戦闘を行う。その戦いの中で、神武天皇の兄であるイツセに放った矢が当たり、イツセはこの傷がもとで後に死亡する。

神武天皇軍を一度は撃退したものの、イツセの提案によって、南下・迂回した神武天皇は軍を立て直しつつ、熊野から吉野・宇陀を抜け、忍坂まで進軍。

ナガスネヒコは再度神武天皇と戦う。『古事記』においてはこの時の戦いの模様は久米歌で綴られており、その歌からは神武天皇軍の士気の高さはうかがえるものの、勝敗については定かではない。おそらく引き分け。

その後、エシキオトシキの軍を討った神武天皇軍と、再度戦う。この戦いにおいて、神武天皇はナガスネヒコを討った、と明記されており、ようやく勝敗が決したと思われる。

その後、ナガスネヒコの妹であるトミヤスビメを娶ったニギハヤヒが、多くの宝物を捧げて神武天皇軍に下ってくる描写がある。ニギハヤヒとトミヤスビメの子がウマシマジであり、物部連、穂積臣、采女臣の祖となる。

古事記ではそこまで詳しい描写はないものの、神武天皇の東遷において最大・最強の障害となった軍及び一族の長であることが考えられる。

【主な登場場面】
「そうだ、東に行こう」から始まった神武天皇の東遷 じわりじわり進みます
敵を歓待して騙し討ち、実兄殺されたリベンジも果たして東遷コンプリの神武天皇

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【ナガスネヒコを祀る神社】
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