沼河比売(ぬなかわひめ)

奴奈川姫とも。

『古事記』に記載のある、越の国(現 新潟県)の美女神。オオクニヌシがその美しさの噂を聞きつけて求愛に行く。

実際に夜這いに来たオオクニヌシが求愛の歌を歌う。「あなたの寝所の扉の前で悶えているよ~」。ほとんどストーカー。

それに対して、ヌナカワはちょっと待ってね、という一首目の歌で返す。

それに続いて二首目では、オオクニヌシを積極的に迎え入れる歌に転じる。

二人はこの歌の交わし合いの翌日、見事に結ばれたとされる。

その伝承地が能生白山神社(新潟県・糸魚川市)など。

『古事記』ではこれ以上の記述はないが、新潟県糸魚川市に残る伝承では、オオクニヌシとヌナカワとの間に生まれた子がタケミナカタで、姫川をさかのぼって諏訪に入り、諏訪大社の祭神になったという。

タケミナカタは、オオクニヌシの次男として国譲りの場面に登場、高天原から派遣されてきたタケミカヅチと力比べして敗退し、諏訪まで逃れ、タケミカヅチに諏訪から二度と出ないことを約束させられる。

『古事記』の流れから言えば、この後で、オオクニヌシの正妻であるスセリが、オオクニヌシがあまりにも現地妻を作ってウハウハしていることに対して、嫉妬に狂う歌を歌うが、オオクニヌシのオンナとして、このヌナカワが意識されているような感じを受ける。

第2代綏靖天皇の名前が、神沼河耳命(かむぬなかわみみのみこと)で、名前に共通項があることについて、諸説ある。また、その意味では、第8代孝元天皇の皇子オオビコの子であるタケヌナカワワケも名前を継承していることになる。

【主な登場場面】
「イイ女がいる? どこでも行くよーん」オオクニヌシ、全国飛び回る

【収録歌】
ヌナカワ、オオクニヌシの求愛を少し焦らし、いなした歌
ヌナカワ、一転、オオクニヌシの求愛を受け入れた歌

【関連記事】
小川神社(小根山) - 母神への往来の要衝に奉斎、6年に一度、北信随一の御柱祭
諏訪大社に御柱を題材に描いた日本画の大作が奉納される - 越の国と諏訪を結ぶ貴重な試み
古事記の白眉! オオクニヌシとヌナカワ姫のラブロマンス・オペラ【北陸新幹線と古事記】
北陸新幹線・糸魚川駅(新潟県・糸魚川市)の式内社 - 1000年以上の歴史を有すパワースポット
北陸新幹線・上越妙高駅(新潟県・上越市)の式内社 - 1000年以上の歴史を有すパワースポット

【ヌナカワを祀る神社】
居多神社 - 古くは「けた」と呼ばれ今では「こたじんじゃ」と読まれる、越後国一宮
氣多神社 - オオクニヌシとヌナカワを祀る高岡市の神社、越中国一宮の古社
府中八幡宮(上越市) - 謙信らが崇敬した越後八幡、越後国総社かつ一国一社の八幡宮
黒姫神社(岡野町) - 奴奈川姫の母?を祀る、黒姫山から麓に遷座、鵜川神社の里宮
奴奈川神社(田伏) - 越後国造が奴奈川姫命の後裔を娶って創祀、7月に田伏祇園祭

御座石神社(茅野市) - 母を祀る諏訪大社上社の境外摂社、4月27日の例祭はどぶろく祭り
能生白山神社 - 室町期の本殿、豊かな社叢と貴重なセミ、4月に「能生まつり」と舞楽
五十君神社 - 当地で薨去した垂仁皇子を奉斎、上杉謙信・景勝や歴代領主の崇敬
阿比多神社 - 飛鳥朝に幣帛、源頼義が祈願、順徳上皇が参拝、7月上旬に神輿渡御
松苧神社(犬伏) - 坂上田村麻呂が創建、重文の本殿、5月七つ詣りで男子が初登山

【関連キャラ】
ヌナカワ - 臨場感ありすぎる恋愛劇のヒロイン