天下を統べる天皇の、
射ようとした猪の~
手負い猪の食いつくのを恐れ~
ワシは逃げ登った、
そりゃ必死に丘の上のハンノキの枝に~

歌い手:雄略天皇
出 典:傍若無人の雄略天皇、さすがに神様には逆らえず最敬礼 鷹揚な神様もそれを赦す
章立て:18.雄略天皇

雄略天皇縦480px傍若無人の雄略天皇もさすがに逆らえないものがある、という回に収録されている歌。

この回の歌はこの一首ですが、この回では、

1.本稿の歌に現れている軽~い、おっことぬし(by もののけ姫)に襲われて逃げ惑う

2.一言主大神(ひとことぬしのおおかみ=ヒトコトヌシ)に出会って平伏する

という二つの話が掲載されています。場所もいずれも葛城で、先の吉野説話と対をなす、葛城説話とも呼べるべきものかもしれません。

この回では、雄略天皇を徹底的にこき下ろしている感じがします。古事記では暴虐の天皇のように描いていますが、ここでオチをつけた、という感じです。

もちろん、実際にイノシシに襲われたのかもしれませんが、イノシシは古事記でも時々登場してくる、登場人物に攻撃してくる、登場人物の反対派の象徴かもしれません。

ヒトコトヌシの説話もそうですが、古代日本のジャイアン雄略天皇にとって、葛城は鬼門だったのかもしれません。

【一言切り取り】
雄略天皇「ゴメンッ、おっことぬし様」
おっことぬし「あんま調子こくでねーどっ」

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

天下を知ろしめす天皇の
お射になりました猪の
手負い猪のくいつくのを恐れて
わたしの逃げ登つた
岡の上のハンの木の枝よ。

【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集

【関連キャラ】
雄略天皇 - 古事記後半の主役は、傍若無人な暴君
おっことぬし - 古事記に時々登場するイノシシな神

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