泊瀬(はつせ)の川の上流に~
神聖な杭を打ち、
下流には立派な杭を打ち~
神聖な杭には鏡をかけ、
立派な杭には美しい玉を懸け~
その美しい玉のように私が大切に思う妹よ
その鏡のように私が愛しむ妻よ
オマエが生きているというなら、
お前の家にも訪ねていき、
故郷をしのぶこともできるんだろうけどな

歌い手:木梨之軽王(きなしのかるのみこ=カルミコ)
出 典:同母兄妹、禁断の情事 皇位を追われ、伊予に流されて心中する兄妹ふたり
章立て:16.允恭天皇

木梨之軽王(きなしのかるのみこ=カルミコ)縦480px允恭天皇の皇太子カルミコが、同母妹の軽大郎女(かるのおおいらつめ=カルノ)と同母兄妹間の禁断の情事に耽り、すったもんだがあって、逮捕され、廃太子となって、伊予湯(現 愛媛県 道後温泉?)に流されます。

寂しい日々を送っていたカルミコですが、突然カルノが情熱的な歌を歌って、伊予に来てくれます。カルノもどうにも待っていられなかったのです。

再会を喜ぶ二人。しかし再開直後から、二人には逃れられない運命が待っていたのでしょうか、その時の歌にも表れていましたが、この歌はその後にさらに覚悟を決めた時の歌となります。

この歌にはもうすでに二人で愛を確かめ合う、そんな楽しい時間についての言葉は少なくなっています。

むしろ、これから迎える二人の死について、そこに向かう前の回顧の趣。

伊予で再会できた二人はそこで愛し合い続ける生活を選ばずに、死を選びます。そこには故郷を思う心、もう二度と都には戻れない身の上への絶望もあったのでしょう。

この歌の後、二人は心中することになります。この歌ともう一つ前の歌が、読み歌(よみうた)と呼ばれています。

こうして、古事記最大のクライマックスの一つ、古代ラブロマンス・オペラの真骨頂でもある、同母兄妹による悲しくも儚く淡い恋の物語は幕を閉じます。

【一言切り取り】
カルミコ「カワイソス、が、一緒に逝くか」

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

隱れ國の泊瀬の川の
上流の瀬には清らかな柱を立て
下流の瀬にはりつぱな柱を立て、
清らかな柱には鏡を懸け
りつぱな柱には玉を懸け、
玉のようにわたしの思つている女、
鏡のようにわたしの思つている妻、
その人がいると言うのなら
家にも行きましよう、故郷をも慕いましよう。

【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集

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【関連キャラ】
カルミコ - 禁断の近親相姦に走る日本最古の歌人
カルノ -  日本古代史上NO.1美女は積極的行動派

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