大阪で出会った女の子~
道を問えば真っ直ぐはやめときな、と。
迂回しな、とっ。

歌い手:履中天皇
出 典:酔いつぶれて寝ていた御殿を放火された履中天皇 家臣に寝たまま担がれて逃走~
章立て:15.履中天皇

履中天皇の古事記に収録されている歌三首の三首目、最後のものになります。いずれも弟に反逆され、寝ているところを火にかけられ、何とか逃げ延びた時に歌ったものですが、この三首目はその逃走時に、道に出会った女の子に、逃走経路を聞いた時の歌です。

泥酔して爆睡していたところを反逆した弟に放火され、臣下に担がれて逃げ出していましたが、一首目で目覚めて事態を把握し、二首目は山の頂から放火の火の勢いを確認して、妻の安否を気遣い、この三首目では逃走経路の確認、という流れになっています。

歌そのものを眺めていてはほのぼの感が強いですが、このように見ていくと、危ういところで難を逃れた履中天皇やその取り巻きの緊迫感が伝わってきます。

この歌に出てくる女の子は、恐らくは履中天皇に心を寄せている勢力の一派。反逆に際して、履中天皇が安全に都に戻れるよう、斥候の役目を担っていたのかもしれません。

この歌を受けて、履中天皇は無事に都に戻ることができました。そして体勢を立て直し、反逆に対して立ち向かっていくことになります。

この次の回、都に戻った履中天皇は、別の弟をけしかけて、反逆した弟を討ち取らせます。きっちりリベンジを果たしてはいますが、そこには歌が伝わっていないのが残念です。

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

大坂で逢つた孃子。
道を問えば眞直にとはいわないで
當麻路を教えた。

【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集

【関連記事】
【古事記の傾向と対策】“反逆”が多すぎる古事記は、本当に天皇家を顕彰しているのか?

前へ | 歌一覧 | 次へ