山城の女が、
木の鍬で栽培した大根~、
その大根のように、
大変きれいに、
お前が言ったから~
大勢のものを連れて、
遠くからやって来てやったよ~
木の鍬で栽培した大根~、
その大根のように、
大変きれいに、
お前が言ったから~
大勢のものを連れて、
遠くからやって来てやったよ~
歌い手:仁徳天皇
出 典:皇后に浮気ばれて家出された仁徳天皇 嫁を追いかけるも、でも愛人も大事!
章立て:14.仁徳天皇

筒木の百済系渡来人・奴理能美(ぬりのみ)の家が家出先だったため、口子としてはイワノに他意はなく(奴理能美とデキているわけではなく)、奴理能美が飼っている珍しい虫を見たくて、イワノがその家に行ったなどと言い訳しつつ、ここでは仁徳天皇も度量の広さを示して、「その通りだろう、ワシもその虫見てみたい」という形式にして、あくまでもカミさんに家出された旦那がカミさんを迎えに行く図、にしないよう、周囲が配慮しています。
筒木まで来た時に仁徳天皇が歌った歌がこれです。
歌からは尊大な態度がうかがえますが、今まで三首もイワノをなだめようとする歌を送っており(一首目は盲目的な慌てっぷり、二首目は改めての求愛、三首目は何とか機嫌を取ろうとする歌)、建前と本音がぶつかっている様がうかがえます。
この歌でもイワノの形容に大根を使っており、家出したイワノを何とかなだめようとする三首目の歌とも共通しています。
しっかし、言っちゃなんだが、たかが家出。それをここまで引っ張って、古事記でも紙面を割くのは何か別の思惑があるのでしょうね。
この家出編での歌は実に七種。カルミコとカルノの禁断の同母兄妹の愛を描いた、古事記最大のクライマックスの回が十二首。まあ、単純に比較はできませんが。
この静かなる戦い、イワノ二首、仁徳天皇四首の計六首の歌は静歌(しずうた=志都歌)の歌返しと呼ばれています。
※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。
山また山の山城の女が
木の柄のついた鍬で掘つた大根、
そのようにざわざわとあなたが云うので、
見渡される樹の茂みのように
賑やかにやつて來たのです。
木の柄のついた鍬で掘つた大根、
そのようにざわざわとあなたが云うので、
見渡される樹の茂みのように
賑やかにやつて來たのです。
・【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集
【関連キャラ】
・仁徳天皇 - 古事記中盤の主役はやはり女好きの御仁
・イワノ - 古代日本最強の姫は、史上初のツンデレ?
コメント