山城の川をさかのぼっていくと~、
川のほとりにさしぶの木が生い立っている~
そのさしぶの木の下に~、
葉の広い、神聖な椿の木がある~
その椿の花は照り輝いている~、
その葉は広くて美しい~
その椿のように広い心、
浮気な心を持った大君よ~
川のほとりにさしぶの木が生い立っている~
そのさしぶの木の下に~、
葉の広い、神聖な椿の木がある~
その椿の花は照り輝いている~、
その葉は広くて美しい~
その椿のように広い心、
浮気な心を持った大君よ~
歌い手:石之日売命(いわのひめのみこと=イワノ)
出 典:鬼の居ぬ間に何とやら 仁徳天皇、嫉妬深い皇后が旅行中に浮気三昧の日々
章立て:14.仁徳天皇

この歌を歌って、イワノは都には戻らず、家出します。カミさんに家出された天皇というのも珍しい。。。
日本書紀などでは、仁徳天皇がもとからヤタノに好意を寄せており、それを快く思っていなかったイワノが「留守中、小癪なことすっなよ」と釘を刺してから旅行に出かけたが、旅行に出た途端、辛抱たまらん仁徳天皇はすぐにヤタノを召した、という流れになっています。しかし、古事記ではここまで細かい描写はありません。
さて、この歌。状況的には怒り爆発だったはずのイワノのものとしては、比較的穏やかに見えます。古事記での描かれたかでは、直情の人イワノ。内に怒りを秘めるというのは似合いません。
この歌を見ていると、「あれほど釘を刺したのに、しょうがない旦那様ね~」というぐらいの感じを受けます。この時代に一夫一婦制を目指せるわけもなく、イワノも若干諦めがあったのかもしれませんが、イワノの仁徳天皇に対する愛も感じられます。うーん、ツンデレ。
しかししかし、家出は事実。イワノの激しさは行動に現れます。ここからイワノと仁徳天皇の歌のバトルが始まります。
この静かなる戦い、イワノ二首、仁徳天皇四首の計六首の歌は静歌(しずうた=志都歌)の歌返しと呼ばれています。
※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。
山また山の山城川を
上流へとわたしが溯れば、
河のほとりに生い立つているサシブの木、
そのサシブの木の
その下に生い立つている
葉の廣い椿の大樹、
その椿の花のように輝いており
その椿の葉のように廣らかにおいでになる
わが陛下です。
上流へとわたしが溯れば、
河のほとりに生い立つているサシブの木、
そのサシブの木の
その下に生い立つている
葉の廣い椿の大樹、
その椿の花のように輝いており
その椿の葉のように廣らかにおいでになる
わが陛下です。
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