水が溜まる依綱の池の、
杭を打つ人が、杭を打っているのも知らないで、
ジュンサイ採りが、手を差し伸べているのも知らないで、
わが心は大変愚かだった~
今では悔しくてたまらないよ~

歌い手:応神天皇
出 典:探し当てた美女を息子に懇願されて譲り渡す応神天皇 懐広い? ちょっと後悔?
章立て:13.応神天皇

応神天皇縦480px応神天皇が見つけてきた美女・髪長比売(かみながひめ=カミナガ)。日向から宮中へ召し上げる途上、難波でカミナガを見初めた後の仁徳天皇(この時は大雀命(おおさざきのみこと))。父である応神天皇にカミナガを譲ってくれるよう頼み、受け入れられます。この歌は、応神天皇が仁徳天皇にカミナガを譲る際、二人を娶せた時の歌の二首目です。

一首目が、仁徳天皇とカミナガが結ばれるのに前向きだったものに比べて、この二首目は、応神天皇の「早まっちまった」という感じが伝わってくるような内容です。

真相はどうだったのでしょうか?

応神と仁徳は親子ではありますが、古事記での描かれ方はかなり微妙な関係。年老いた応神が、若い仁徳に強制されて、カミナガを差し出さざるを得ない状況だったのかもしれません。

また、古事記ではカミナガが宮中に入る前に仁徳に見初められた、としていますが、現実的には応神が先に手をつけ、子を産ませ、その後に仁徳の懇請に従って、カミナガを仁徳に譲った、とも考えられるような事実もあります。

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

水のたまつている依網の池の
堰杙を打うつてあつたのを知らずに
ジュンサイを手繰つて手の延びていたのを知らずに
氣のつかない事をして殘念だつた。

【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集

【関連記事】
【古事記の傾向と対策】“NTR”は古事記のカンフル剤 ラブロマンス・オペラのゆえん

【関連キャラ】
応神天皇 - 自身の登場シーンがあまり多くない天皇
仁徳天皇 - 古事記中盤の主役はやはり女好きの御仁

前へ | 歌一覧 | 次へ