この蟹はどこの蟹だ?
遠い遠い角鹿(つのが)の蟹だ。
横に歩くとどこへ行く~
すくすくとオレっちが進むと、
木幡の道でであった乙女~
その後ろ姿が小さな楯のようにすらりとしてたまらない~
歯並びも実に綺麗だね~
こういう女が是非欲しいと常々思っていた女に、
この宴で、このように向かい合って、チョーハッピー~
遠い遠い角鹿(つのが)の蟹だ。
横に歩くとどこへ行く~
すくすくとオレっちが進むと、
木幡の道でであった乙女~
その後ろ姿が小さな楯のようにすらりとしてたまらない~
歯並びも実に綺麗だね~
こういう女が是非欲しいと常々思っていた女に、
この宴で、このように向かい合って、チョーハッピー~
歌い手:応神天皇
出 典:自分の子の中で、兄を疎んじ、弟を愛でる応神天皇 理想の女をゲットして有頂天
章立て:13.応神天皇
応神天皇が嫁取り、宮主矢河枝比売(みやぬしやかわえひめ=ヤカワエヒメ)と宇治で出会って、すぐに妃の一人にすべく、ヤカワエの家に行った酒宴で歌った歌。
角鹿(つのが)は敦賀、応神天皇にとっては縁のある土地です。
ヤカワエを絶賛する歌で、そんな女をゲットできた応神天皇の喜びがあふれています。
またこの歌は、ヤカワエは皇后でもないのに皇太子の母になったことの説明譚にもなっているようです。それだけ溺愛した妃だから、その子が皇太子だよっ、と。皇后との子で有力だった大雀命(おおさざきのみこと)へのけん制も含まれているかもしれません。
どちらにしろ、このヤカワエと多くのチョメチョメを繰り返し、結果三人の御子を授かる応神天皇。その三人の御子とも特徴的な人生を送ることになります。
この後も、応神天皇編はまだまだ続きますが、応神天皇の歌は残り一首。酒に酔った時の歌であるため、実質的に応神天皇の肉声が伝わる歌は、古事記ではここまでとなります。というより、これだけ古事記で紙面を割かれている天皇なのに、掲載されている歌はわずかに五首、意外に影の薄い天皇と言えるかもしれません。
※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。
この蟹はどこの蟹だ。
遠くの方の敦賀の蟹です。
横歩をして何處へ行くのだ。
イチヂ島・ミ島について、
カイツブリのように水に潛つて息をついて、
高低のあるササナミへの道を
まつすぐにわたしが行きますと、
木幡の道で出逢つた孃子、
後姿は楯のようだ。
齒竝びは椎の子や菱の實のようだ。
櫟井の丸邇坂の土を
上の土はお色が赤い、
底の土は眞黒ゆえ
眞中のその中の土を
かぶりつく直火には當てずに
畫眉を濃く畫いて
お逢いになつた御婦人、
このようにもとわたしの見たお孃さん、
あのようにもとわたしの見たお孃さんに、
思いのほかにも向かつていることです。
添つていることです。
遠くの方の敦賀の蟹です。
横歩をして何處へ行くのだ。
イチヂ島・ミ島について、
カイツブリのように水に潛つて息をついて、
高低のあるササナミへの道を
まつすぐにわたしが行きますと、
木幡の道で出逢つた孃子、
後姿は楯のようだ。
齒竝びは椎の子や菱の實のようだ。
櫟井の丸邇坂の土を
上の土はお色が赤い、
底の土は眞黒ゆえ
眞中のその中の土を
かぶりつく直火には當てずに
畫眉を濃く畫いて
お逢いになつた御婦人、
このようにもとわたしの見たお孃さん、
あのようにもとわたしの見たお孃さんに、
思いのほかにも向かつていることです。
添つていることです。
・【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集
【関連キャラ】
・応神天皇 - 自身の登場シーンがあまり多くない天皇
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