このお酒は私が作ったものではない。
酒の神の、常世の国にいる少名毘古那神(スクナビコナ)が、
何度も何度も神に祈って、喜び狂い、踊りまわって、
常世の国から持ってまいったお酒ですよ。
さあ、盃の底に残さず、どんどんお飲みなさい。さあさあ。

歌い手:神功皇后
出 典:反乱討伐後の応神天皇 神との名の交換 神功皇后の酒宴でのお出迎え
章立て:13.応神天皇

神功皇后縦480px新羅遠征を終えて、九州に戻ってきた神功皇后が九州で産んだ御子である応神天皇。応神天皇が都に戻ってくると、忍熊王(おしくまのみこ)が反乱を起こしましたが、難波根子建振熊命(なにわねこたけふるくまのみこと=建振熊命)を将軍として、この乱を鎮圧します。敦賀での休息を経て、応神天皇が都に戻ってきた時、母である神功皇后が喜んで出迎えた時の歌です。

神功皇后のわが子を迎えた喜びが伝わってくる歌ではありますが、常世の国スクナビコナが歌いあげられているのが特徴。

オオクニヌシの国造りに協力し、その途上で常世の国に行ったとされるスクナビコナ。酒造でも有名になったのでしょうか。

しかし、新羅遠征の前のご神託においてはアマテラス(天つ神)の言葉を受け取った神功皇后(このアマテラスの登場も唐突でしたが)、ここでオオクニヌシ陣営の重鎮・スクナビコナ(国つ神)に関係する歌を歌うというのは、少しちぐはぐ感があります。

どのような背景がある歌なのか、興味深い所です。

次の建内宿禰の歌と合わせて、酒造りの時に歌われる歌で、酒楽の歌と呼ばれています。

【一言切り取り】
神功皇后「今日は飲みましょうね~」
スクナビコナ「おっと、行かなくては」

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

このお酒はわたくしのお酒ではございません。
お神酒の長官、常世の國においでになる
岩になつて立つていらつしやるスクナビコナ樣が
祝つて祝つて祝い狂わせ
祝つて祝つて祝い廻って
獻上して來たお酒なのですよ。
盃をかわかさずに召しあがれ。

【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集

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【関連キャラ】
神功皇后 - 三韓征伐の英雄は息子を溺愛する魔性の女?
建内宿禰 - 応神の本当の父? 波乱呼ぶ伝説的人物
応神天皇 - 自身の登場シーンがあまり多くない天皇
スクナビコナ - 国造り、オオクニヌシの相方は謎な神?

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