古事記を彩る姫たちエントリーNO.24 赤猪子(あかいこ=アカイコ)
引田部の赤猪子。
雄略天皇が三輪川に巡幸中に見初めた、美童女。
「オマエ可愛いから嫁に行くな。成長して、大人のオンナになったら、宮中に呼んで妻にしてやる」と雄略天皇に口説かれます。
しかし、その後一向に雄略天皇からの連絡がなく、待ちに待ち続けて、アカイコちゃん、八十歳を超えるおばあちゃんになってしまいました。
今さら宮中に召されるとは思いませんでしたが、待ち続けた思いを雄略天皇に何とか告げたく、結婚の約束をした時に賜った品々を持って、上京。
雄略天皇と会うことができましたが、雄略天皇はそれが誰なのか、何だったのかを忘れてしまったもよう。
すぐにキレて殺すことも多い雄略天皇。本件は、そんなヒドイ雄略天皇の、別のヒドさを物語る説話。
しかし、さすがの雄略天皇も、事情を把握した後は、アカイコちゃんを憐れみます。しかし、後で歌に出てきますが、その憐れみも、「若いころにエッチしときゃよかった」というような、身勝手さが付加されているあたり、さすが雄略天皇です。
さて、アカイコを憐れんだ雄略天皇は、一度くらい抱いてやろうと思いましたが、さすがに勃たなかったようで、歌を二首送ります。
一首目は、年老いたアカイコを抱いてやれないことを、「畏れ多くて」と歌ったもの。
二首目は、若かった時に、是非ヤリたかったよ~、という自分自身への悔恨。
んんっ、憐れんでね~な、おい。かわいそ過ぎるアカイコちゃん。
雄略天皇の歌を聞いて、さめざめと涙を流し、アカイコちゃんも二首歌います。流れとしては、この涙は雄略天皇に歌を賜ったから感動して、という感じでしたが、実は残念無念な気持ちが表れているのかもしれません。
一首目は、年を取りすぎて、もう取り返しがつかないよ~、というもの。
二首目は、若いっていいな、皇后の若日下王(わかくさかのみこ=ワカクサカ)ちゃんが若くて綺麗で羨ましい、というもの。
麗しき一人の女性の人生を奪った雄略天皇、さすがにアカイコちゃんが帰る時、多くの品物を下賜して送りました。
この話はここで終わりなのですが、それに続く雄略天皇の吉野に関する話で、そこで出会った乙女とソッコーで寝るのですが、その乙女に向って歌った歌で、「永遠に若くあってほしいな~」と読みます。
アカイコちゃんの物語と吉野の説話、直接的なつながりはないかもしれませんが、アカイコちゃんの物語のすぐ後に出てくるだけに、この吉野で雄略天皇が歌った歌は、アカイコちゃんのことが念頭にあったのではないか、とも思われます。
さて、本文でも、今までも、触れてきませんでしたが、記述通り解釈するのであれば、アカイコちゃんはおそらく七十年は待ちぼうけを喰らったと思われます。しかし、雄略天皇、あるいはアカイコちゃんの歌に出てくる皇后ワカクサカにしても、この七十年の時の流れを感じません。
雄略天皇がアカイコちゃんと出会った頃(美童女)と、アカイコちゃんが雄略天皇に会いに行った頃(老婆)で、雄略天皇の年齢にあまり変化がみられない、少なくともそうしたものをうかがわせる記述は古事記にはありません。
そう考えるとやはり異常です。天皇や皇族が年を取らない、神仙ぶりの表現とも言われていますが、古事記は雄略天皇に対して手厳しい評価を下しているのは間違いなく、ここで雄略天皇の長寿さ、異能さを示す意図がいまいち分かりません。
ここは純粋に、やはりアカイコちゃんの男に忘れ去られた悲哀があくまでも主題であって、そうしたひどい仕打ちをした雄略天皇の傲慢さを強調するために、経年の矛盾をあえて放置した、と考えた方が良いかもしれません。
奈良県桜井市に乘田神社(ひけたじんじゃ 曳田神社)があります。祭神は大己貴命など。つまり大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)で、同体とされる大物主神(おおものぬしのみこと=オオモノヌシ)との関連、近くの三輪山との関連が指摘される神社です。アカイコちゃんの属する引田部はおそらくこの周辺に住んでいたと思われ、アカイコちゃんと雄略天皇が出会い、アカイコちゃんが数十年も待ちぼうけを食った、説話の舞台と考えられています。(参考)
引田部はオオクニヌシ系列、つまり国つ神であり、アカイコちゃんのこの説話は、天つ神・雄略天皇の国つ神に対する横暴を暗に示しているのかもしれません。
【関連記事】
・オマエ可愛いから大人になっても嫁行くな」と雄略天皇に言われた童女の顛末
・ほとばしる美しさで、男どもをメロメロにする女子たち - 古事記を彩る姫たち
・日本が世界に誇る、古代ラブロマンス・オペラへようこそ - ぶっちゃけ古事記本文の目次
【関連キャラ】
・アカイコ - 無常! 暴君・雄略に青春を奪われた姫
・雄略天皇 - 古事記後半の主役は、傍若無人な暴君
・ワカクサカ - 暴君・雄略を馭するほどのほっこり姫
引田部の赤猪子。
雄略天皇が三輪川に巡幸中に見初めた、美童女。
「オマエ可愛いから嫁に行くな。成長して、大人のオンナになったら、宮中に呼んで妻にしてやる」と雄略天皇に口説かれます。
しかし、その後一向に雄略天皇からの連絡がなく、待ちに待ち続けて、アカイコちゃん、八十歳を超えるおばあちゃんになってしまいました。
今さら宮中に召されるとは思いませんでしたが、待ち続けた思いを雄略天皇に何とか告げたく、結婚の約束をした時に賜った品々を持って、上京。
雄略天皇と会うことができましたが、雄略天皇はそれが誰なのか、何だったのかを忘れてしまったもよう。
すぐにキレて殺すことも多い雄略天皇。本件は、そんなヒドイ雄略天皇の、別のヒドさを物語る説話。
しかし、さすがの雄略天皇も、事情を把握した後は、アカイコちゃんを憐れみます。しかし、後で歌に出てきますが、その憐れみも、「若いころにエッチしときゃよかった」というような、身勝手さが付加されているあたり、さすが雄略天皇です。
さて、アカイコを憐れんだ雄略天皇は、一度くらい抱いてやろうと思いましたが、さすがに勃たなかったようで、歌を二首送ります。
一首目は、年老いたアカイコを抱いてやれないことを、「畏れ多くて」と歌ったもの。
二首目は、若かった時に、是非ヤリたかったよ~、という自分自身への悔恨。
んんっ、憐れんでね~な、おい。かわいそ過ぎるアカイコちゃん。
雄略天皇の歌を聞いて、さめざめと涙を流し、アカイコちゃんも二首歌います。流れとしては、この涙は雄略天皇に歌を賜ったから感動して、という感じでしたが、実は残念無念な気持ちが表れているのかもしれません。
一首目は、年を取りすぎて、もう取り返しがつかないよ~、というもの。
二首目は、若いっていいな、皇后の若日下王(わかくさかのみこ=ワカクサカ)ちゃんが若くて綺麗で羨ましい、というもの。
麗しき一人の女性の人生を奪った雄略天皇、さすがにアカイコちゃんが帰る時、多くの品物を下賜して送りました。
この話はここで終わりなのですが、それに続く雄略天皇の吉野に関する話で、そこで出会った乙女とソッコーで寝るのですが、その乙女に向って歌った歌で、「永遠に若くあってほしいな~」と読みます。
アカイコちゃんの物語と吉野の説話、直接的なつながりはないかもしれませんが、アカイコちゃんの物語のすぐ後に出てくるだけに、この吉野で雄略天皇が歌った歌は、アカイコちゃんのことが念頭にあったのではないか、とも思われます。
さて、本文でも、今までも、触れてきませんでしたが、記述通り解釈するのであれば、アカイコちゃんはおそらく七十年は待ちぼうけを喰らったと思われます。しかし、雄略天皇、あるいはアカイコちゃんの歌に出てくる皇后ワカクサカにしても、この七十年の時の流れを感じません。
雄略天皇がアカイコちゃんと出会った頃(美童女)と、アカイコちゃんが雄略天皇に会いに行った頃(老婆)で、雄略天皇の年齢にあまり変化がみられない、少なくともそうしたものをうかがわせる記述は古事記にはありません。
そう考えるとやはり異常です。天皇や皇族が年を取らない、神仙ぶりの表現とも言われていますが、古事記は雄略天皇に対して手厳しい評価を下しているのは間違いなく、ここで雄略天皇の長寿さ、異能さを示す意図がいまいち分かりません。
ここは純粋に、やはりアカイコちゃんの男に忘れ去られた悲哀があくまでも主題であって、そうしたひどい仕打ちをした雄略天皇の傲慢さを強調するために、経年の矛盾をあえて放置した、と考えた方が良いかもしれません。
奈良県桜井市に乘田神社(ひけたじんじゃ 曳田神社)があります。祭神は大己貴命など。つまり大国主命(おおくにぬしのかみ=オオクニヌシ)で、同体とされる大物主神(おおものぬしのみこと=オオモノヌシ)との関連、近くの三輪山との関連が指摘される神社です。アカイコちゃんの属する引田部はおそらくこの周辺に住んでいたと思われ、アカイコちゃんと雄略天皇が出会い、アカイコちゃんが数十年も待ちぼうけを食った、説話の舞台と考えられています。(参考)
引田部はオオクニヌシ系列、つまり国つ神であり、アカイコちゃんのこの説話は、天つ神・雄略天皇の国つ神に対する横暴を暗に示しているのかもしれません。
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・雄略天皇 - 古事記後半の主役は、傍若無人な暴君
・ワカクサカ - 暴君・雄略を馭するほどのほっこり姫
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