御真木入彦(みまきいりひこ)よ、
御真木入彦よ、
お前の命を密かに殺そうと、
後ろの戸からお前と行き違い、
前の都からお前と行き違い、
じっとお前の様子をうかがっている男が
いるのも知らないで、
ああ、呑気な御真木入彦よ

歌い手:謎の少女
出 典:四道将軍を派遣しようとして反乱に気付いた崇神天皇「伯父さん、討伐してちょ」
章立て:9.崇神天皇

崇神天皇のお父さん・開化天皇の兄に、大毘古命(おおびこのみこと=オオビコ)がおり、崇神天皇はその伯父に北陸地方の平定を命じました。いわゆる四道将軍の派遣ですが、古事記自体に「四道将軍」という言葉は出てきません。

命令通りオオビコが出発した時、大和(現 奈良県)と山城(現 京都府)の坂にある平坂という所で、謎の少女が不思議な歌を歌っていました。それがこの歌です。

オオビコは最初意味が分からず、通り過ぎようとしますが、思い直してその少女のもとに行き、「その歌はなんだ?」と聞きます。少女は「口からついて出てくるだけ」と答え、少女自身もわからないようです。何らかの神懸りだったのでしょう。

不思議なこともあるものだ、と、オオビコは念のため、一旦崇神天皇のもとに帰還、事の次第を報告しました。崇神天皇は少し考えて、建波邇安王(たけはにやすのみこ=タケハニヤス)が謀反を企てていることを示唆する歌だと看破、この伯父に討伐を命じます。

この反乱軍と討伐軍の戦いの描写もツッコみ所、ごふごふ、けっふん、面白いのですが、それは本文をご確認ください。

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

御眞木入日子さまは、
御自分の命を人知れず殺そうと、
背後の入口から行き違い
前の入口から行き違い
窺いているのも知らないで、
御眞木入日子さまは。

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