神風吹く伊勢の海、
大きな石をはい回っているヤドカリのように、
敵の周囲をはい回って、
さんざんに撃って殺ってしまおう。

歌い手:久米人=大久米命(おおくめのみこと)
出 典:敵を歓待して騙し討ち、実兄殺されたリベンジも果たして東遷コンプリの神武天皇
章立て:8.神武天皇

大久米命(おおくめのみこと)縦480px神武天皇の東遷において、途中、神武の実兄が瀕死の重傷を負う大敗を喫した登美能那賀須泥毘古(とみのながすねびこ=ナガスネビコ)に対して、リベンジを果たした際に歌われた三番目、最後の歌。

ニラ山椒と続くシリーズの完結編で、ヤドカリ。しかしポイントは何といっても、史上初めて「神風」に言及したことでしょうか。ご存じのように、この後、事あるごとに使われる言葉になってきます。

神武天皇の東遷という天皇家の人の世における最大の事業で、最大の敵に相対した時、それが吹いたことを示す歌としても興味深いものがあります。

また、神風が一番最初に吹いたのは伊勢、伊勢湾だった、ということでしょうか。それともこの神風は、一面では凶暴な台風のことかも。この頃から既に、そもそも台風の通り道である日本列島の中でも、特に台風に見舞われやすい地域として、紀伊半島及び伊勢近辺が認識されていたのでしょうか。そもそも、そんな地に伊勢の神宮があることも謎です。

三首の歌を詠み合わせていくと、宿敵ナガスネビコをいかに完膚なきまで叩き潰したか、ということを強調したい意図がはっきりと見て取れます。

この歌もやはり久米歌です。

【一言切り取り】
大久米命「がんがんイケや、がんがんっ」

※下記は、現代語譯 古事記 稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳による現代語訳。上のぶっちゃけ訳とも見比べてください。

神風の吹く伊勢の海の
大きな石に這い廻っている
細螺のように這い廻って
やつつけてしまうぞ。

【古事記の傾向と対策】古事記に収録されている歌113首の索引、リンク集

【関連キャラ】
大久米命 - 神武の片腕は斜に構えた万能の自信家

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